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トロデーン城に戻る。
俺の姿を見つけた仲間達が駆け寄ってくる。
中でもミーティアの表情は、心配の余り疲れ気味にも感じられた。

「ごめんね。
 もう、大丈夫だよ。」

安心させるつもりで声をかけると、彼女の頬を涙が伝った。
思わず狼狽したが、そのまま俺の胸にすがりついてくる……。

「……エイト。
 ミーティアの所為で無理させて、ごめんなさい……。
 ……ごめんなさい……。」

涙の篭った声が、徐々に小さくなる。
優しく抱き締める。
皆に見られているけど、別に構わなかった。
やがて泣き止んだのを見届けると、互いの身を離し、
俺はトロデ王に真っ直ぐ向き直った。

「陛下。
 戴冠式の練習を始めましょう。
 俺は、トロデーンを支える王になります!!」

キッパリ言ってしまって心なしか緊張する。
だが、男に二言は無い!!

驚愕し、周囲に静寂に近い沈黙が訪れるが、
ククールが拍手を始めると、次にヤンガス、ゼシカの順に拍手が起こり、
やがて城内に割れんばかりの拍手と喝采が沸き起こった。
興奮鳴り止まぬ中、トロデ王だけが真剣な表情で俺を見据える。

「エイト。
 本当に良いのじゃな?」

「はい!!」

俺の強い返事に王の表情が明るくなる。
大きく頷くと、周囲を見回し、トロデ王は他の臣下達に準備を促した。

「うむ!!
 皆、何をしておる!!
 練習を始めるぞ!!」

傍らのミーティアが俺の右手を握り締めている……。

……そうだよね。

俺は、王になっても孤独にはならない。
だって、こんな素晴しい仲間達に囲まれているのだから……。
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