「のう、エイト。
 もうそろそろ、戴冠式の練習が必要じゃのう。」

嬉々として、トロデ王が俺に語りかけてくる。
戴冠式というのは、王位を継ぐ儀式のことだけど……。
<1>
今日は近衛隊長として、部下となる近衛兵達の訓練をしなければならない。
訓練兵の中には、同期の者もいるけど、皆、素直に従ってくれる。
……俺にとってはその行為が寂しかった。

「何、落ち込んでるんだよ。」

頭に巻いたバンダナを引っ張られ、
面倒臭そうに振り返ると、ククールだった。

「おいおい。
 そんな、面倒臭そうに俺を見るなよ。
 そういえば、もうすぐ戴冠式だって……。」

「一体、誰に聞いたんだよ。」

まだ、誰にも話していない筈なんだけど。
不審に思ってククールが指差す壁の方に視線を移すと……?

__おや?

風も無いのに、たなびく白いマフラー。
4人のバニー(マリー、ミリー、ムリー、メリー)を従え、その男は立っていた。
城内に無い筈のスポットライトが、彼等を照らしている!!
ふ、不思議な演出だ。

「やあ、ボーイ!!
 元気そうで何よりだ!!」

……お願いします!!
これ以上ややこしくなるのは嫌なので、本当に今日は帰って下さい……!!
初会も無視を決めていた俺は、モリーさんの背を扉へ向かって押し出す。

「ちょ、ちょっと待つのだ、ボーイ!!!!」

「だいたい、呼んでないでしょう?
 頼んでもいないのに……。」

「話を聞い……。」

言い終わるのを待たず、モリーさんを城外へ押し出し、強引に扉を閉じる。
戸を背にもたれかかると、大きな溜め息をついた。

__とうとう、王様になるのか……。

心配そうに見つめてくるミーティアと、ククールの視線が気になるが、
取り敢えず天井を見上げてみる。

吹き抜けの天井と、広すぎる謁見の間。
荘厳華麗な城内を見回し、改めて事の重大さを認識する……。

__俺に、そんな器があるのだろうか……。
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