「のう、エイト。 もうそろそろ、戴冠式の練習が必要じゃのう。」 嬉々として、トロデ王が俺に語りかけてくる。 戴冠式というのは、王位を継ぐ儀式のことだけど……。 |
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今日は近衛隊長として、部下となる近衛兵達の訓練をしなければならない。 訓練兵の中には、同期の者もいるけど、皆、素直に従ってくれる。 ……俺にとってはその行為が寂しかった。 「何、落ち込んでるんだよ。」 頭に巻いたバンダナを引っ張られ、 面倒臭そうに振り返ると、ククールだった。 「おいおい。 そんな、面倒臭そうに俺を見るなよ。 そういえば、もうすぐ戴冠式だって……。」 「一体、誰に聞いたんだよ。」 まだ、誰にも話していない筈なんだけど。 不審に思ってククールが指差す壁の方に視線を移すと……? __おや? 風も無いのに、たなびく白いマフラー。 4人のバニー(マリー、ミリー、ムリー、メリー)を従え、その男は立っていた。 城内に無い筈のスポットライトが、彼等を照らしている!! ふ、不思議な演出だ。 「やあ、ボーイ!! 元気そうで何よりだ!!」 ……お願いします!! これ以上ややこしくなるのは嫌なので、本当に今日は帰って下さい……!! 初会も無視を決めていた俺は、モリーさんの背を扉へ向かって押し出す。 「ちょ、ちょっと待つのだ、ボーイ!!!!」 「だいたい、呼んでないでしょう? 頼んでもいないのに……。」 「話を聞い……。」 言い終わるのを待たず、モリーさんを城外へ押し出し、強引に扉を閉じる。 戸を背にもたれかかると、大きな溜め息をついた。 __とうとう、王様になるのか……。 心配そうに見つめてくるミーティアと、ククールの視線が気になるが、 取り敢えず天井を見上げてみる。 吹き抜けの天井と、広すぎる謁見の間。 荘厳華麗な城内を見回し、改めて事の重大さを認識する……。 __俺に、そんな器があるのだろうか……。 |
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