<3>
ククールに回復呪文『ベホマ』を詠唱した後、
立ち上がった俺はミーティアに真っ直ぐ向き直る。

今ので誤解されたら大変だから。
しかし、彼女の表情は至って穏やかだ……。

「俺は『倦怠期』なんて思ってないからね。」

「分かってますわ。
 ミーティアだって、エイトが大好きですもの。」

気が付くと、皆に注目されている。
冷やかされると思いきや、意外な反応が返ってきた。
考え込むように腕組みしながら、ククールが自分の意見を語り始める。

「俺が思うには、エイトと姫様って、
 2人きりになる機会が少ないんじゃないのか?」

周囲を見回すと、トロデ王、ヤンガス、ゼシカも同時に頷いている。
俺とミーティアは互いに顔を見合わせ、困った表情になる。

__沢山の人々が住む王城で、2人きりなんて無理な話だよな……。

「お前達、最後に接吻したのは何時(いつ)じゃ?」

__はい?

突然、とんでもない事を問うてくるトロデ王。
だが、リアクションに困る発言は、これだけに留まらない!!

「そろそろ、王子か、王女か、孫か、出来て欲しいところじゃが♪
 夜の営みは捗(はかど)っておるか?」

__はいい!?

前回でシリアス路線に行くのかと思いきや、
コメディ路線に逆戻りですか!?

マ、マズイ!!
このままいけば、確実に『表』で『R指定』だ……!!

「ミーティア……!!」
「はい?」

狼狽しながら、彼女の手を握る。
全く訳分からないといった表情で小首を傾げられたが、今は……。

「取り敢えず、逃げよう!!!!」
「ええ〜〜〜〜〜〜〜〜!?」

驚愕するミーティア。
唖然と佇む仲間達。
だが、それより先に俺は、瞬間転移呪文『ルーラ』詠唱していた。
場所は……何処でもいいや!!!!
一応、正常にルーラ発動。

「何処行くんじゃ〜〜〜〜〜〜〜〜!!?
 質問の答えを聞いておらんぞ〜〜〜〜〜〜〜〜!!?」

……気のせいだろうか?
遠くで、トロデ王が叫ぶ声が聞こえた気がする……。
次へ
前へ
DQ8『小説』CONTENTS