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「いや〜〜〜、とにかく片付いて良かったのう♪」

全てから解放され、上機嫌のトロデ王。
気が付けば書類の山が一掃され、元の綺麗な机に戻っている。
イシュマウリさんはというと、俺達が外に出た後、窓を閉じてしまった。
だから、図書室の壁には何も残っていない。

「こんなに都合よく片付いていいのかよ……。」

欠伸(あくび)を噛み殺しながら、ククールが呆然と呟く。
でも今までが、ずっと都合悪かったから、たまにはいいんじゃないかな〜。
旅の時も、『運が悪い』なあ……って思った位だったし。
そんな俺の思考に、ニコニコしながらミーティアが追い討ちをかける!!

「だって、『運の良さ』のステータス値が無かったじゃないですか!!
 元々、計る必要も無かったってことですわ♪」

__……。

「そりゃ、キツイな〜〜〜〜〜。
 でも否定出来ない……。」

ククールに同意。
確かに、本当に運が悪いのか、良いのか判らなかったし……。

「な〜〜〜に、若者2人が落ち込んでおるのじゃ!!
 ほれ。
 夜も遅いし、寝るぞ!!!!」

項垂れる俺とククールを制し、トロデ王が笑顔になる。
彼等を先に行かせ、ミーティアに視線を移す。
イシュマウリさんの件で、今回も彼女に救われた……。

「ミーティア。
 早く寝た方がいいよ?」

しかし、俺達以外誰も居なくなったテラスで、素直に彼女は身を預けてきた。
肩を抱き締めると、俺の胸元に顔を埋めるミーティアが、聞こえる程度の声で囁く。

「……ミーティア。
 こんなふうに、エイトと一緒に居られるのが夢みたいです……。」

「俺もだよ。」

でも、夢じゃない。
自力で手に入れた、現実なんだ。

夜空の月を見上げながら、
俺達は、今が在ることに感謝したのだった。
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