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イシュマウリさんを呼び出したミーティアを連れて、
ククールと共に図書室へ戻る。
奥の壁には窓から差し込んだ月光が反射し、『窓の影』を描いていた。

「何やっていたんじゃ、ずっと待っておったんじゃぞ!!!!」

中に入った俺達を見付け、大慌てで駆け寄る我が君主、トロデ王。
ピョンピョンその場で飛び跳ねながら、抗議する。
だが……。

__ミーティアの願いって……、もしかして。

脳裏を過ぎるのは……。
いや、でも……。

「何、考え事してんだ?
 ほら、着いたぞ?」

狼狽する俺を置いて、さっさと3人はイシュマウリさんの所へ行ってしまう。
大慌てで後を追うと、さっそく彼が待っていた。
今にも願いを言おうとするミーティアの腕を引き寄せ、耳元で囁くように問う。

「ま、待って……!!
 ミーティアの願いって、俺達の……『子』?」

一瞬、キョトンとなったが、苦笑すると首を横に振って否定する。

「違いますわ。
 確かに子供は欲しいですけど、
 いつかきっと授かると信じてますし、私の願いは……。」

いつの間にか、後方にイシュマウリさんが浮くように佇(たたず)んでいる。

「高貴な姫君。
 貴女の願いを叶えましょう……。」

「私の願いは……。」

__願いは……!?

一同注目。
時間が止まったように、気まずい沈黙が訪れる。
やがて、意を決したように、ミーティアは自分の願いを告げた。


「収集の付かなくなった『書類の山』を全て、片付けて下さい!!!!」


一同、ガクッと項垂れる。

意に介せず、優雅に『月影のハープ』を弾き鳴らすイシュマウリさん。
呆然となる俺達とは反対に、ミーティアとイシュマウリさんは、
共に歌とハープの伴奏という共演を果し、
次々に書類の山を片付けていったのだった……!!

余計な心配をしてしまった俺は、ちょっと恥ずかしい気もする……。
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DQ8『小説』CONTENTS