<3>
__ミーティア、起きてるといいけど……。

不安に感じながらも、静かに夜の城内を歩く。
見張りの兵士も、船を漕ぐように頭を揺らしながら眠っていた。

__……忘れてた!!

イシュマウリさんが出現する時、周囲の人々が寝てしまうんだった……!!
今頃気付き、俺は頭を抱える。

「何やってんだ?」

聞き慣れた声で振り返る。
いつもの服装でククールは未だに起きていた。

__良かった。じゃあ、ミーティアも起きてる。

ホッと胸を撫で下ろす。

「イシュマウリさんが来ているみたいなんだ。」

「!!?
 何だって……う。」

驚愕し、大声を上げようとしたククールの口を塞ぎ、
慌てて辺りを見回すと、俺は険しい顔で窘(たしな)める。

「……声が、大きいよ……!!
 今、夜だよ……、皆、寝てるんだよ……!!?」

「……悪かった……。」

陳謝され、お互い元の体勢に戻ると、丁度テラス奥が見えた。
そこには慎ましやかに佇(たたず)み、星空を見上げるミーティアの後姿が在る。

取りあえずククールを放っておいて、徐に彼女の傍に歩み寄る。
気配に気付き振り向くと、
ミーティアは笑顔のまま、静かに語りかけてきた。

「今日は、お月様が綺麗ですね。
 だからでしょうか、『お星様が少ない』ような気がします……。」

「空が明るいと、見える星も見えなくなるからね……。
 文献に書いてあったし。
 文献といえば、今、図書室に『イシュマウリ』さんが来てるんだ。
 ミーティア、何か望んだ?」

問いかけに、彼女は素直に頷く。
俺は首を傾げた。

一体、何を望んだというのだろう?
殆どの願いは叶っている筈なのだけど……。

ひょっとして……!!?
次へ
前へ
DQ8『小説』CONTENTS