<2>
俺とトロデ王は揃って中に入る。
宙に階段のように並ぶ浮岩と、神秘的な光景。
やっぱりココは、『イシュマウリ』さんの世界だ。

初めて目にする光景に愕然となり、大口を開けたまま佇(たたず)む王。
思わず苦笑してしまう。

「そういえば陛下は初めてでしたよね。
 ココは、かつて『月影のハープ』で『古代船』を復活させてくれた、
 『イシュマウリ』さんが住む世界です。」

「何と、あの『若者』の……。」

……ククールは『男』か『女』か区別付かないって言っていたけど、
トロデ王は『男』だと判断したらしい……。
実は俺も、イシュマウリさんは『男』だと思っている。

__あ、そうだ!!

思い出して、手を叩く。
だが、出口へ向かって急ごうとした俺の服裾を掴み、王が狼狽する。

「何処へ行くのじゃ!!?
 ワシが1人になってしまうではないか……!!」

「大丈夫ですよ。
 ミーティアを呼んで来ようと思っただけです。」

今の時刻。
彼女は、テラスで夜空の星を眺めている頃だから。

「でも、陛下はココに居て下さいね。
 誰か1人でも異世界の者が居なくなれば、
 イシュマウリさんが、扉を消す可能性がありますから。」

「う、うむ、分かった。
 早く戻ってくるのじゃぞ。」

「解かりました。」

それでも困惑顔のトロデ王。
安心させるように微笑みかけると、外へ出る。
元の図書室から壁に映る『窓』は不思議な事にずっと開いたままだ。

__でも何故、今頃開いたんだろう……?

古代船が復活したのだから、窓は二度と開かれない筈だ。
じゃあ、彼に願いを叶えて欲しい人物が他に居るということだろうか?

それにしても……。

いつ見ても、不思議なんだよね……、コレ。
次へ
前へ
DQ8『小説』CONTENTS