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「まあ、皆さん。
 ご一緒で良く来て下さいました。
 ゆっくりしていって下さいませ……。」

慎ましやかにアルバート邸内に招かれ、応接間でお世話になる。
トロデーン国のトロデ王直々に、アポイントメント無しで、
直接訪問なんてしたものだから、相手の方が驚いてしまっている。
それは、アローザさんも同じ事だった……。

「それで、本日はどういった用件で参られたのでしょう?」

丁寧な言葉で問うアローザさんに、
トロデ王は拍子抜けて狼狽してしまった。

「いやのう……。
 その……。」

口篭る王に、アローザさんは、
ゼシカをワザと視界に入れない様に俯きながら、心の内を語り始める。

「アルバート家は、長年領主として、リーザスを守ってきました。
 ですが、それも私の代で終わりです。
 ……長男サーベルトを失い、長女ゼシカも自覚が無い……。
 誰か別の者にアルバート家を譲り渡した方が……。」

「母さん、待って……!!!!」

彼女の言葉を遮って、ゼシカが割って入る。

凛とした表情で、ククールの袖を引っ張り手前に押し出す。
驚愕した彼は、ゼシカとアローザさんを交互に見やり、言葉が出ない。

「ちゃんと、連れてきたわよ……!!
 居なくなった『許婚』の代わり。
 だから、アルバート家は無くならないし、これからも続くわ……!!」

「ゼシカ……。」
アローザさんが、ゼシカを見つめた。

一方、作戦では『そうなっていた』ものの、
実際に出されるとは思っていなかったらしく、
ククールは呆然としたままだ。

__まあ、結果オーライなんじゃないかな……。

ヤンガスとミーティアの方に視線を移し、俺は苦笑する。

「兄貴。ゼシカを見縊(みくび)ると、悪いでげすよ……。」
「うん。俺も、そう思って反省していたところだよ……。」
「でも、ビックリしました。
 ゼシカさんの方から、そんな積極的な言葉が出てくるなんて……。」

他愛の無い会話が続いた後、
俺は未だ放心状態のククールを引っ張り、
ソファーに座らせてやった。

今まで本命ゼシカに「軽い奴」扱いされ、突っ撥ねられていただけに、
一番ビックリしたのは、ククールだったろう。

じゃあ、トロデーンに戻ろうかな……?

俺達は、アローザさん達に挨拶をし、
瞬間転移呪文『ルーラ』でトロデーンに帰国したのだった。
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