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……が、しかし!!

「今度は、発声練習が五月蝿くて、寝られないそうです……。」

アスカンタ城に戻った俺達は、
キラから、その後のパヴァン王の話を聞き、愕然となる。

「どっちにしろ、結果は同じだったんだな……。」
ククールが項垂れる。

「取り敢えず、今回は、パヴァン王も大変そうじゃし、
 引き上げるとするかのう。
 ところで、エイト。
 何があったのじゃ?
 ミーティアが、何故か、しょげておるし。」

トロデ王の言葉に、ミーティアが力無く俯いた。
そして彼女は、俺に聞こえるように、ボソッと呟く。

「練習させれば大丈夫だと思ってたのに……。
 ミーティア、しょんぼりです……。」

__そりゃ、皆がそんな『才能』を持っている訳ではないから……。

「でも、俺達は、ミーティアのおかげで助かったよ。」
「本当ですか……?
 皆さんの、お役に立てましたか……?」
「うん!!
 だから、元気出してね♪」
「はい!!」

ふう……!!
何とか、笑ってくれてよかった。
やっぱり、ミーティアには笑顔が一番だよね♪

「何と言ってお詫びすれば良いのか……。
 皆様、本当に今日は、スイマセンでした……。」

キラに謝られ、俺達全員で彼女を励ます。
別に、パヴァン王やキラが悪いわけではないし。

「それじゃあ、戻ろうかの。」

晴れた空の如く元気に仕切る、我がトロデーン君主、トロデ王。
だが、何故かゼシカの表情だけは曇っていた。

「どうしたの?」

問うと、意外な答えが返ってきた。

「母さんがね……。
 許婚が消えちゃったから、ソレに代わる人を連れてきなさい……て、言うのよ。
 それで、家に戻りにくくなっちゃって……。」

悩むゼシカに、ククールだけが敏感に反応した気がしたのだが?
俺が首を傾げると、彼は視線を逸らし、知らん振りをする。

取り敢えず、次は、ゼシカの家庭の問題を解決させないとね……!!
嵐の予兆を感じ取りつつ、何故か俺は緊張していたのだった。
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