<2>
「『バレンタインデー』って、怖い日なんでげすね……。」

俺の話を聞いたヤンガスが、身を震わせる。
だが、ククールは肩を竦ませ、嘆息した。

「エイト。
 お前、何か勘違いしてるんじゃないか?
 『バレンタインデー』は、別にそんなに怖い日じゃないぞ?」
「でも、文献を見たら、こう書いてあったし……。」
「そうでがすよ。
 兄貴の言ってる事は正しいでがす!!」

俺とヤンガスを順に見比べながら、ククールは更に深い溜め息をつく。

「お前らな〜〜。
 特に、ヤンガスの方は、エイト崇拝者だしなぁ……。
 いいか。俺だって聖職者だ。」
「でも、『聖堂騎士団』辞めたんでしょ?」
「いや、兄貴。
 正確には『辞めさせられた』んでがすよ!?」

ヤンガスの言葉に、ククールが珍しく切れた……!!
2人の視線が衝突し、火花が飛び散る。

「うるせえよ、ヤンガス!!!!
 あんな、だらけた軟弱組織、こっちから払い下げだ!!!!」
「アッシは、事実を言ったまででげすよ!!?
 ギャンブル好きで不埒な聖職者なんて、世間には必要ないでがす!!!!」

「まあ、まあ。」
俺は、ククールとヤンガスの間に割ってはいると、彼等を制した。
取り敢えず、ククールに素朴な疑問を投げかけてみることにしようか。
ずっと、気になってたんだ。

「ところで、何でゼシカは、ココに来ていないの?
 元々これは、ミーティアから言い出した話だから、
 同じ女の子であるゼシカの方が、よく知ってると思うんだけど……?」

すると、ククールは急に顔面蒼白になり、首を横に振って狼狽した。
「どうしたの?」

「エイト。
 そんなことすると、犠牲者が出る!!
 世の中の男達が全滅する……!!」

「犠牲者?」
俺は全く訳が分からない。
ククールは静かに微笑むと、俺の背を押した。

「取り敢えず、こういうことは、最高聖職者に聞くのが一番だろ?
 さっさと行ってこい。」

__いったい、何だってんだ?
次へ
前へ
DQ8『小説』CONTENTS