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「お前って本当に、デリカシーが無いよな……。」 自分で回復呪文『ベホマ』を施(ほどこ)しながら、 ククールが俺に向かって文句を言う。 「時間も弁(わきま)えず、 連絡も寄こさず、 しかも人の嫁に手を出すような奴に言われたくないね……!!」 俺が、本気で睨み付けると、彼は狼狽した。 すると、トーポが俺のポケットから出てきて、 煙と共に祖父グルーノの姿に戻る。 「散々な言われ様じゃな〜〜〜♪」 グルーノは、面白そうにククールを見た。 彼は機嫌を損ねて、そっぽを向いた。 ……と、それより。 「グルーノ。 どうして、元の姿に戻ったの?」 俺が問うと、祖父は立派な顎髭(あごひげ)を梳(す)きながら答えを返す。 「いや。 姫様が、『エイトがちゃんと休んでいるのか』心配しとったじゃろ? 確かに、エイトはちゃんと休息しとらんし、ワシも心配しておったのじゃよ。」 言われて、ミーティアに視線を移すと、心配そうに頷き返してきた。 「でも、いったい何処で休息したら……。」 「『里帰り』はどうじゃ? お主とて、ちゃんと『故郷』があるんじゃぞ。」 優しく微笑んで祖父は俺を見上げる。 その姿は、いつも見上げてくるトーポの優しい目によく似ていた。 「そうですね。 エイトの故郷。ミーティアも行ってみたいです。」 ミーティアも優しく微笑んで俺の手を取る。 ……そうだな。 記憶を失って、さまよっていた頃は、 『故郷』があるなんて考える余裕が無かった……。 今は平和だし、約束された生活と、温かい家族がある。 俺の両親は、生前は不幸だったかもしれないが、俺に『未来』を残してくれた。 ……と。 「感傷に浸っているところ、大変申し訳ないですが、俺も行っていいでしょうか? エイト様。」 ククールが、『あからさまな敬語』で問うてくる。 __しまった。コイツの存在。すっかり忘れていた……。 俺は思わず片手で額を押さえ、項垂れた。 だが、仕方ない。 ククールは瞬間転移呪文『ルーラ』が使えるから、 俺が拒否しても付いて来る気がするし。 「皆に、迷惑かけなければいいよ。」 俺が仕方なく許可すると、彼は満足気に頷いた。 だが俺は、その後、 彼を『竜神の里』に連れて行ったことを大変後悔することになる。 |
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