<4> | ||
考えている暇も無く、グラッドさんの自室に到着した。 グラッドさんは、 命の恩人であり賢者の子孫であるメディばあさんの息子さんで、 不幸にもメディばあさんは、 黒犬レオパルドを乗っ取ったラプソーンに……。 ……本当に、どうしようも無かったのだろうか……? 救えたかもしれない命に、俺の心は悔恨の念に苛(さいな)まれる。 恩人の死に、ミーティアも夢の中で泣いていた……。 俺がそれに気が付くと、気丈にも彼女は元気に振舞っていたが……。 扉をノックすると、グラッドさんの声がした。 失礼して、俺とククールはそのまま入り……。 グラッドさんの表情が驚愕のあまり、固まってしまう。 「そ、その格好は……!?」 あ。何だ、そうか!! 思わず苦笑し、頭を掻く。 「いえ。 俺は、この装備で闘っていたものですから。 このままの格好で来てしまいました。」 竜神装備を手に入れたのは、ラプソーン討伐後だから、 もちろんこの話は嘘なのだが、誤魔化すのには丁度良い言い訳だった。 グラッドさんは、「なるほど。」と納得し、ホッと胸を撫で下ろす。 「今日は、どんな用事で参られたのですか?」 さて、コレを言って大丈夫なものか……。 腕組しながら考え事をしていると、 ククールが代わりに言ってしまった。 「実は、『五月病』の薬が無いかと思って、ココに来たんだ。 エイトの奴が『五月病』だから……。」 グラッドさんの目が、点になる。 だが、流石(さすが)は評判の薬師。 頭の切り替えは早かった。 「要するに、気が入っていない状態なのだな? 『きつけ草』が一番効くかもしれない。 試してみるか?」 苦笑しながら俺の顔を覗き込むと、グラッドさんは、意外な一言を告げた。 「見たところ、治っているようにみえるぞ? 薬など必要ないんじゃないかな?」 __え? 驚愕し、グラッドさんとククールを順に見やると、 2人は同じように顔を見合わせ笑っている。 そういえば、何だか『気持ち』も普段通りに戻ったような。 「コレで、姫様に会っても可笑しくないよな。」 「そうだね。 ありがとう。 グラッドさん、ククール。」 グラッドさんの話では、脳が疲れている時、こういう無気力に襲われるらしい。 まあ、初めての時期って、色々気を遣いすぎるからね♪ 俺の場合、その初めてが『国王』になる為の勉強だった訳だ。 俺達は、笑顔でグラッドさんに別れを告げ、オークニスを跡にした。 |
||
■次へ ■前へ ■DQ8『小説』CONTENTS |