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考えている暇も無く、グラッドさんの自室に到着した。

グラッドさんは、
命の恩人であり賢者の子孫であるメディばあさんの息子さんで、
不幸にもメディばあさんは、
黒犬レオパルドを乗っ取ったラプソーンに……。

……本当に、どうしようも無かったのだろうか……?
救えたかもしれない命に、俺の心は悔恨の念に苛(さいな)まれる。

恩人の死に、ミーティアも夢の中で泣いていた……。
俺がそれに気が付くと、気丈にも彼女は元気に振舞っていたが……。

扉をノックすると、グラッドさんの声がした。
失礼して、俺とククールはそのまま入り……。
グラッドさんの表情が驚愕のあまり、固まってしまう。

「そ、その格好は……!?」

あ。何だ、そうか!!
思わず苦笑し、頭を掻く。

「いえ。
 俺は、この装備で闘っていたものですから。
 このままの格好で来てしまいました。」

竜神装備を手に入れたのは、ラプソーン討伐後だから、
もちろんこの話は嘘なのだが、誤魔化すのには丁度良い言い訳だった。
グラッドさんは、「なるほど。」と納得し、ホッと胸を撫で下ろす。

「今日は、どんな用事で参られたのですか?」

さて、コレを言って大丈夫なものか……。
腕組しながら考え事をしていると、
ククールが代わりに言ってしまった。

「実は、『五月病』の薬が無いかと思って、ココに来たんだ。
 エイトの奴が『五月病』だから……。」

グラッドさんの目が、点になる。
だが、流石(さすが)は評判の薬師。
頭の切り替えは早かった。

「要するに、気が入っていない状態なのだな?
 『きつけ草』が一番効くかもしれない。
 試してみるか?」

苦笑しながら俺の顔を覗き込むと、グラッドさんは、意外な一言を告げた。

「見たところ、治っているようにみえるぞ?
 薬など必要ないんじゃないかな?」

__え?

驚愕し、グラッドさんとククールを順に見やると、
2人は同じように顔を見合わせ笑っている。
そういえば、何だか『気持ち』も普段通りに戻ったような。

「コレで、姫様に会っても可笑しくないよな。」

「そうだね。
 ありがとう。
 グラッドさん、ククール。」

グラッドさんの話では、脳が疲れている時、こういう無気力に襲われるらしい。
まあ、初めての時期って、色々気を遣いすぎるからね♪
俺の場合、その初めてが『国王』になる為の勉強だった訳だ。

俺達は、笑顔でグラッドさんに別れを告げ、オークニスを跡にした。
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