<5>
教会。

新郎であるアクシズが、慣れぬ正装に窮屈そうに佇(たたず)む。
嘆息すると、幼馴染のディートが、彼を窘(たしな)めた。

「……アクシズ!!
 きついでしょうが、大人しくして下さい……!!」

「五月蝿い!!」

格式ばった事は苦手だが、アイリの夢を叶える為である。

「な〜〜〜に、やってるんですの!!
 アイリが来ますわよ!!
 アクシズ様、しっかりして下さいませ!!」

今度は、脳天からリオに怒鳴られた。
抗議しようと、口を開きかけた時、教会の扉が開く。
驚愕したディートとリオが、慌てて席に着く。

__……。

純白のウェディングドレスを身に纏い、
裾まで広がる絹のベールを従え、
慎ましやかに顔を上げる。
美しいアイリの花嫁姿に、アクシズは我を忘れて見惚れてしまう。
神父が促す。
慌てて姿勢を正すと、彼は立ち位置に戻る。

「……アイリ。
 本当に、綺麗ですわ……。」

リオが呆然と呟く。

花嫁は、父に手を引かれ、入場する。
ゆっくりとヴァージンロードを歩み、やがて花嫁は、花婿の隣に立つ。
オルテガが席に着いたのを確認すると、神父が小声で問う。

「ヴァンベルトと、クライン。
 どちらも、代々伝わる勇者の家系と聞いた。
 どちらのラストネーム(苗字)を使用するのかな?
 それとも、ファーストネーム(名前)で呼んだ方が良いかな?」

「ファーストネームで、お願いします。」

__勇者としてでなく、1人の女として、アクシズと結婚したいから……。

凛としてアイリが告げると、神父は頷いた。
一呼吸置くと、彼は問いかけを始める。

「アクシズ。
 汝は、病める時も、いかなる苦難の時も、
 アイリを妻とし、一生涯の愛を約束すると誓いますか?」

「はい。
 誓います。」

顔を上げ、胸を張り、アクシズは力強く断言する。
途端に喜びが込み上げ、アイリの胸が熱くなる。
やっと、自分の夢が叶うのだ。

「アイリ。
 汝は、病める時も、いかなる苦難の時も、
 アクシズを夫とし、一生涯の愛を約束すると誓いますか?」

「……はい!!
 誓います。」

神父に促され、互いに向かい合うと、
アクシズはアイリの左手の薬指に『結婚指輪』をはめる。

余談であるが、この指輪は、アクシズの今は亡き両親の形見であり、
「守るべき人が現れたら渡しなさい。」と、
最後に父・サイモンが息子に与えたものである。

丁寧に顔が見えるほどにベールを捲(めく)り、
彼女の肩を抱き寄せ、誓いの口付けを交わす。

同時に拍手と喝采が湧き上がり、教会内が歓喜の渦に包まれた。

2人は本当に結ばれたのだ。

幸せと喜びに満ちた表情で、アクシズはアイリと顔を見合わせた。
次へ
前へ
『DQ3』外伝CONTENTS