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__……どうしよう、やっぱり緊張する……。 結婚式を控え、白いウェディングドレスを身に纏(まと)い、 アイリは鏡の前に座っていた。 ロマンチストな彼女の性格故、『お嫁さん』は幼い頃からの夢だった。 だが、父・オルテガが崩御されたとの報告を聞き、 魔王軍に恨みを持ってから、勇者としての宿命を受け入れ、 女として生きる事を諦めていたのだ。 ロマリア地方のあの泉で、アクシズと出会うまでは……。 地上界。 アリアハン城下町に建つ、勇者アイリの生家。 花婿であるアクシズと仲間達は、既に教会で待機している。 後は、花嫁であるアイリが、父・オルテガと母・ルシアと共に、 教会へ行くだけであった。 自室の扉がノックされ、返事をすると、正装をした父が入ってくる。 娘と同じく緊張しながらだったが……。 美しい娘の晴れ姿に、瞳を揺らすと、感嘆の溜め息を漏らす。 「綺麗だ……。 本当に……。」 褒められ、泣きたい気持ちに駆られたが、 なるべく気を落ち着けると、父に真っ直ぐ向き直り、無理に微笑んだ。 頬を一筋の涙が伝う。 「父さん……。 今まで有難うございました。」 オルテガは、優しい表情で頷くと、娘の肩を抱き寄せた。 __泣かないと決めていたのだがな……。 やはり無理だったらしい。 柄に無く歴戦の勇者は、ただ一人の娘の父親として、瞳に涙を浮かべる。 「アイリに父親らしい事をしてやれなかったのが、唯一の後悔だ。 本当にすまなかった……。」 陳謝されたが、アイリは大きく首を横に振り、次に笑顔で語り始める。 「ううん。 私、旅をしていて解かったの……。 父さんは、皆に愛される素晴しい勇者なんだって。 とても、嬉しかったよ。」 バラモス討伐が目的の、勇者オルテガの軌跡を辿る、勇者アイリの旅。 確かに都合の良いことばかりではなく、 辛苦から幾度と無く涙を流し、諦めかけた事もあった。 「幸せになるんだぞ。」 「はい。」 涙の篭る返事を耳にしたオルテガは、 まだベールを被っていないアイリの頭を優しく撫で、微笑んだ。 娘を連れて、部屋を出る。 母・ルシアと、祖父・ガウルが、 瞳に涙を溜め、コチラを見つめている。 「行こう。」 オルテガが声を掛けると、一同は揃って頷いた。 |
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