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勇者達は、揃って城内に入る。 ただの人間は歓迎されない筈だが、今回は状況が違った。 「そうですか……。 竜の女王様のご子息は、魔界の守護神グランドラゴーンの手に……。」 大袈裟なのか、ポケットからハンカチを取り出し、 お喋りホビットが大粒の涙を拭う。 アクシズとアイリは互いに顔を見合わせ、困った表情になる。 主の存在しないこの居城で、彼等はどうするつもりなのだろうか? 彼女が素朴な疑問を投げかけると、ホビットは胸を張って答えた。 「ご安心を♪ 神竜様と、竜の女王様のご子息である王子様が戻ってくるまで、 我々が守っていますよ……!!」 城内奥には、勇者達を天界へ導いた光が床に反射している。 徐に歩み寄り、アクシズは光の前で立ち止まり、天を見上げた。 天井には、翼を持った天使達が描かれており、 まるで彼等が天界へ導いているかのようだ。 「忘れないよね。 少なくとも私達は……。」 アイリの声に振り返る。 無言のままアクシズは、ゆっくり頷いた。 遥か未来。 地上界の文明が進み、天界は人々の思考から消えるかもしれない……。 だが、1人でも忘れない者が在れば、 天空の民達は彼等の心の中で、生き続けることが出来る。 「ねえ、アクシズ。」 「何だ?」 「アクシズって、『孤高の勇者』よね……。」 柔らかく微笑んで、彼女は彼を見つめた。 「だって、普通の人から見れば、かけはなれた境地に貴方は在ると思うの。 無欲で、人の為に自分を犠牲にする……。」 「それは、アイリだって……。」 静かに俯き、アイリは首を横に振る。 アクシズの手を取り、瞳を真っ直ぐ見つめる。 互いに向き合ったまま沈黙し、勇者2人は動かない……。 やがて彼の掌が、彼女の頬を滑る様に撫でると、 顔を寄せ、互いの唇が触れあう。 仲間達がやってくる。 気付かないのか、それでも口付けを止めない若き勇者2人に、 周囲は戸惑いつつも、温かい目で恋人達を見守っていた。 天は濁りの無い白い雲を浮かべ、青い空に鳥達が群れを成す。 地上界にて天界へ一番近い場所。 白亜の居城は、天に向かって聳(そび)え立つ。 未だ戻らぬ、若き主を待つ為に……。 |
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