空は澄み渡り、青く広がる。 天界を覆う雲海は、太陽の照り返しを受け、 時に地上界に光を零しながら風に流されていく。 |
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『そうか……。 しかし、覚悟は出来ていた……。』 息子である『竜の女王の卵』を、 魔界の守護神グランドラゴーンに奪われ、 同じ心情を持つ勇者アクシズに救出を願った。 だが、それは叶わず、 地上界『氷の洞窟』にあった『魔界の門』が閉じてしまった為、 今後、魔界に入ることすら許されない……。 ちなみに……。 数百年後。 魔王として育てられ、『竜王』と呪われた名を付けられた竜神の子は、 魔界から外界へ出てしまうが、コレはまた別の『冒険の書』での話である。 神竜は嘆息すると、勇者達に向き直る。 謝罪の為、『神竜の塔』へ昇った者達は、 勇者アクシズ、勇者アイリ、勇者オルテガ、賢者ディートの4人。 アイリ以外は、神竜と一戦交えたメンバーである。 『勝敗を付けたいか?』 以前、祭壇を去る時。 いつまでもアクシズが、 悔恨の念から神竜を見送っていたのを覚えていたのだろう……。 しかし、若き勇者は首を横に振る。 「……勝ってはならない闘いもあると、 貴方との戦闘で解かった。」 『少しは成長したらしいな……。』 言葉に温かさを感じ、一同の表情が綻ぶ。 アイリに視線を移し、神竜の表情が微笑の形になる。 『アクシズ。 願いは叶ったようじゃな。 今後は、お前が彼女の願いを叶えてやらねばならぬ。 それは、お前でなければ出来ない。』 全てを見透かされ、驚愕したが、 アクシズはアイリに視線を移すと、力強く頷いた。 何も願いを叶えられるのは、 『神竜』のような特別な存在だけではない……。 誰でも生きているからには、誰かの願いを叶えているものである。 何故なら、皆、望まれて生まれてきたのだから……。 勇者達は『神竜の塔』を跡にし、次に『ゼニスの城』に向かう。 天界を暴走させた事に対する謝罪をする為だ。 もっともコレばかりは、不可抗力に近いものがあるのだが……。 |
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