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__……ココは? 確か、『破壊神』の放った『イオナズン』を直に受けた筈である。 しかし、外傷は無い。 それどころか、自分は何処に立っているのかも判らない。 目の前に広がる、生命の息吹の感じられない大地。 噴火を止めない火山。 何故か勇者アクシズは、その火山に懐かしさを感じていた。 「……過去の世界よ……。」 少女の声がする。 同じ大地に佇む勇者アイリに視線を移し、 アクシズは『ルビスの剣』を鞘に収める。 「過去?」 「私は、同じ過ちを繰り返さぬように、 世界の混乱を鎮める為に、産まれてきたの……。 ……でも。」 瞳を揺らし、アイリはアクシズの瞳を真っ直ぐ見つめた。 「出来なかった……。 私……。 また、貴方を愛してしまった……。」 いとおしさ故、抱き締めたい衝動に駆られるが、ココはアイリの夢の中だ。 足は地に張り付いたように動かない。 自分か、もしくは彼女の夢が覚めるのか、周囲が縮小されていく。 踵(きびす)を返し去っていこうとする彼女をアクシズは絶叫し、止める。 「行くな!!!! アイリが勇者だろうと、『ロト』だと関係無い!!!! 俺は、『アイリ』が好きだ……!!!! 『アイリ』を愛しているんだ!!!!」 必死に重い足を動かし、徐に近づくと彼女を自分の腕に抱き寄せた。 思い通りに動かない身体だが、懇親の力を込める。 二度と離さぬように……。 「……アクシズ。 私も、『アクシズ』が大好き……。 貴方が、勇者だと解かる前から、ずっと……。 『アクシズ』を愛していたの……。」 しがみ付き、彼の胸に顔を埋めると、彼女の頬を涙が濡らす。 たとえ輪廻だろうと、関係無い……。 過去に、精霊神ルビスとガイア神に何が起こったのかも、 彼等にとってはどうでも良かった。 |
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