<5>
__……ココは?

確か、『破壊神』の放った『イオナズン』を直に受けた筈である。
しかし、外傷は無い。
それどころか、自分は何処に立っているのかも判らない。
目の前に広がる、生命の息吹の感じられない大地。
噴火を止めない火山。
何故か勇者アクシズは、その火山に懐かしさを感じていた。

「……過去の世界よ……。」

少女の声がする。
同じ大地に佇む勇者アイリに視線を移し、
アクシズは『ルビスの剣』を鞘に収める。

「過去?」

「私は、同じ過ちを繰り返さぬように、
 世界の混乱を鎮める為に、産まれてきたの……。
 ……でも。」

瞳を揺らし、アイリはアクシズの瞳を真っ直ぐ見つめた。

「出来なかった……。
 私……。
 また、貴方を愛してしまった……。」

いとおしさ故、抱き締めたい衝動に駆られるが、ココはアイリの夢の中だ。
足は地に張り付いたように動かない。
自分か、もしくは彼女の夢が覚めるのか、周囲が縮小されていく。
踵(きびす)を返し去っていこうとする彼女をアクシズは絶叫し、止める。

「行くな!!!!
 アイリが勇者だろうと、『ロト』だと関係無い!!!!
 俺は、『アイリ』が好きだ……!!!!
 『アイリ』を愛しているんだ!!!!」

必死に重い足を動かし、徐に近づくと彼女を自分の腕に抱き寄せた。
思い通りに動かない身体だが、懇親の力を込める。
二度と離さぬように……。

「……アクシズ。
 私も、『アクシズ』が大好き……。
 貴方が、勇者だと解かる前から、ずっと……。
 『アクシズ』を愛していたの……。」

しがみ付き、彼の胸に顔を埋めると、彼女の頬を涙が濡らす。
たとえ輪廻だろうと、関係無い……。
過去に、精霊神ルビスとガイア神に何が起こったのかも、
彼等にとってはどうでも良かった。
次へ
前へ
『DQ3』外伝CONTENTS