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『サムエル。 [ロト]が来たぞ……。』 口の端を上げ、死の天使サムエルのまま『破壊神』が微笑する。 地上界『氷の洞窟』にあった『魔界の扉』は、 魔界の守護神グランドラゴーンによって閉じられた。 だが、『魔界の扉』は地下世界にも存在する。 封印を解く能力を持つ『ロト』を手に入れれば、再び閉じた扉は開かれる。 __ふざけやがって……!! 翼が有れば、空中戦は出来た。 堕天使となり、完全に翼を失ったアズライルが舌打ちする。 「アズライル!! 私も翼は失ったけど、戦意は喪失してないわよ♪」 緊迫した雰囲気を打ち消すように、無邪気にガブリウルが片目を瞑る。 額に指を当て、ミハエルが驚愕する。 人間になっても彼(彼女)は両性具有のままだが、 『魂』の動きは読めなくなったらしい。 仲間の動揺に気付いたアズライルが視線だけミハエルに移す。 「どうした?」 「……『勇者の魂』が何処にあるのか判らなくなりました……!!」 困惑するミハエルに、アズライルとガブリウルが深い溜め息を漏らす。 取るに足らないのか、元『死の天使』3人を無視し、 『破壊神』は視線をテラス奥へ移していた。 「其処までよ……。 『シドー』。 自分の世界へ帰りなさい……!!」 凛とした声に驚愕し、一同が後方へ注目する。 可憐な少女が、胸に掲げた『聖なる守り』を握り締め佇(たたず)んでいる。 彼女の傍らには、護衛のように寄り添う青年が、 『ルビスの剣』を鞘から抜き放ち立っていた。 珍しく『破壊神シドー』の表情が凍りつく。 __まさか……。 今まで、『ロト』にだけ注意を向けてきたが、 他にも脅威となる存在があったらしい。 宝剣の持ち主、勇者アクシズと視線を合わせる。 だが……。 勇者アクシズを加護する『ガイア神』は、 その能力を封じられ、ネクロゴンド火山に幽閉されている。 一時、勇者アイリが火口に投げた『ガイアの剣』の効果によって、 ガイア神が目覚めたものの、天竜クラインの血筋たる勇者は、 秘めたる能力を十分に発揮出来ずにいた……。 相手側の不利を悟り、『破壊神』の表情が嘲笑に戻る。 |
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