<2> | ||
雲が荒海の如く流れ出す。 城を支える白雲が、徐々に闇色に染められていく。 天界。 ゼニスの城。 死の天使サムエルの肉体を乗っ取った『破壊神』は、 彼の能力を使用し、集っていた天空の民達を『石』に変えていた。 呆然と立ち並ぶ、同族の石像達を見つめ、智天使ケルビンが狼狽する。 __マズイですよ……、コレはマズイですよ……!! 城内は暗く、かつての神々しさが無い。 『破壊神』との戦闘は、死の天使アズライル達3人に任せ、 ゼニス王を連れて、ココまで来たのは良かったのだが……。 「……ケルビン。 ここまでで良い。」 臣下である智天使を制し、石化した民を見やると、 王は悲哀に満ちた表情になった。 「天空人達が犠牲になっているというのに、 我々が逃げていては、王の役目が務まらぬ。」 「……で、ですが!!」 抗議する為、ケルビンの顔が険しくなる。 『破壊神』の目的は、自分の肉体を奪い、 『邪神の像』に封印した『精霊神ルビス』に復讐することである。 数多の『人間の生贄』を集うよりは、 不老不死の肉体を持つ『ゼニス王』を取り込む方が手っ取り早い。 天空の民達のエネルギー源となっているのは、『人々の信仰』である。 『破壊神』が復活し、人間が滅べば、人々の『夢』で成り立つ天界は消滅する。 「……エビル!!」 彼方に視線を移し、王と智天使は驚愕した。 エビル(バラモスエビル)の周囲には、 『ル−ラ』で到着した勇者達が佇(たたず)んでいたからだ。 一応僧侶の職に就いたものの、 信仰心の薄いリオは驚愕し、キョロキョロと周囲を見回している。 彼女の想像とは裏腹に、荘厳華麗な筈の城内は暗闇で覆われ、 変わり果てていた……。 「何が、あったのだ?」 性質の違いからゼニス王を苦手としていたエビルも、 直接問わずにおれない。 「テラスへ行けば解かる……。 だが、今は石化した民を救ってくれ……。 頼む……!!」 床に跪(ひざまず)き頭を下げる天空の王。 一瞬驚いたものの、勇者達は互いに視線を交わすと、 彼に向かって同時に頷いた。 |
||
■次へ ■前へ ■『DQ3』外伝CONTENTS |