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雲が荒海の如く流れ出す。
城を支える白雲が、徐々に闇色に染められていく。

天界。
ゼニスの城。

死の天使サムエルの肉体を乗っ取った『破壊神』は、
彼の能力を使用し、集っていた天空の民達を『石』に変えていた。
呆然と立ち並ぶ、同族の石像達を見つめ、智天使ケルビンが狼狽する。

__マズイですよ……、コレはマズイですよ……!!

城内は暗く、かつての神々しさが無い。
『破壊神』との戦闘は、死の天使アズライル達3人に任せ、
ゼニス王を連れて、ココまで来たのは良かったのだが……。

「……ケルビン。
 ここまでで良い。」

臣下である智天使を制し、石化した民を見やると、
王は悲哀に満ちた表情になった。

「天空人達が犠牲になっているというのに、
 我々が逃げていては、王の役目が務まらぬ。」

「……で、ですが!!」

抗議する為、ケルビンの顔が険しくなる。

『破壊神』の目的は、自分の肉体を奪い、
『邪神の像』に封印した『精霊神ルビス』に復讐することである。
数多の『人間の生贄』を集うよりは、
不老不死の肉体を持つ『ゼニス王』を取り込む方が手っ取り早い。

天空の民達のエネルギー源となっているのは、『人々の信仰』である。
『破壊神』が復活し、人間が滅べば、人々の『夢』で成り立つ天界は消滅する。

「……エビル!!」

彼方に視線を移し、王と智天使は驚愕した。
エビル(バラモスエビル)の周囲には、
『ル−ラ』で到着した勇者達が佇(たたず)んでいたからだ。

一応僧侶の職に就いたものの、
信仰心の薄いリオは驚愕し、キョロキョロと周囲を見回している。
彼女の想像とは裏腹に、荘厳華麗な筈の城内は暗闇で覆われ、
変わり果てていた……。

「何が、あったのだ?」

性質の違いからゼニス王を苦手としていたエビルも、
直接問わずにおれない。

「テラスへ行けば解かる……。
 だが、今は石化した民を救ってくれ……。
 頼む……!!」

床に跪(ひざまず)き頭を下げる天空の王。
一瞬驚いたものの、勇者達は互いに視線を交わすと、
彼に向かって同時に頷いた。
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『DQ3』外伝CONTENTS