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いつの間にか、戦線離脱している勇者アクシズを不審に感じ、
勇者オルテガは、彼を探すべく、
グランドラゴーンから視線を外した。
……と。
その隙を見逃さず、巨大な足が彼を前方へ張り飛ばす……!!

「父さん!!!!」

思わず絶叫し、勇者アイリは凛とした表情で睨みつけると、
助走を付け跳躍した。
グランドラゴーンに到達すると、『王者の剣』を振り下ろす。
刃は滑るように鱗を抉(えぐ)り、体内へ入り込む。
初めて味わう苦痛に身もだえ、グランドラゴーンは堪りかねて、
全身を震わせ背中のアイリを振り払った。
天井に達するか達しないかの巨体から落とされる彼女を、
駆け寄り受け止め、勇者アクシズは止まったように、
グランドラゴーンを睨みつける。

アイリは驚愕したが、自分を抱き抱えているのがアクシズだと解かると、
安堵の微笑みを見せた。
傍らに降ろし、彼は制して彼女を下がらせる。
後方には、オグルが控え、企んだような笑みになる。
異変に気付き、一同の動きが止まる。

重々しい足を徐に進め、グランドラゴーンは5本の首を振り回すと、
中央の首をアクシズに向けて下ろし、視線を合わせた。
自分より何倍もあろう守護神だが、勇者は落ち着き、微動だにしない……。
魔界の守護神は、面白そうに語りかける。

『[ガイア]の勇者よ。
 [ルビスの剣]を託されたらしいな……。』

背中2刀の『ガイアの剣』は鞘に収まり、
代わりに腰に掛けた鞘から『ルビスの剣』が抜き放たれている。
両手剣だったゆえ、盾は無い。

『ガイアの鎧』を身に纏い、
3本の剣を装備している姿は逞しいが、
細身の勇者アクシズにはそぐわない。

仲間達は唖然として彼を見ていたが、
アイリだけは不思議な感覚に囚われ始めていた。

__確か、『ガイア神』は……。

ネクロゴンド火山に幽閉され、
その能力を『ミトラ神』に封じ込まれている。

不憫に思った『精霊神ルビス』は、何度か拘束されている彼と逢瀬を重ねたが、
地下世界を創造した際、ミトラ神から3種の神器製作を命じられる。

『王者の剣』に視線を移し、アイリは驚愕した。
かつて、ルビスがガイアに『マグマ』を送ってもらったように、
彼女も同じように、アクシズに『マグマ』を出してもらった。

これは、偶然なのか、輪廻なのか……。
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『DQ3』外伝CONTENTS