雲海は、天に浮かぶ城を支え、 壁は太陽の照り返しを受け、白く輝いている。 天界。 『ゼニスの城』。 |
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テラスに佇み、ゼニス王は彼方を見据え、沈黙している。 気が付くと、後に智天使ケルビンが立って、こちらを見ている。 心配そうに。 「どうしたのだ?」 自身も神の地位に在るため、理由は読めていたが、 ゼニス王は一応、問うてみることにする。 ポケットからハンカチを取り出し、ケルビンは額の汗を拭った。 「ご存知ですか? いえ、既に全て、ご存知だと思いますが……。」 「……サムエル達の事か……。」 重たい王の呟き。 智天使は、表情を緊張させたまま頷く。 「全ては、運命なのだよ……。」 指を彼方に翳(かざ)し、ゼニス王は遠くを見る。 同じく視線の先を追うと、ケルビンは愕然となった。 青い天を覆う、ただ1つの暗闇。 中央は天使の形を取っているが、その雰囲気は禍々しい。 闇の天使が其処に居る。 死の天使サムエルは、変わり果てた姿を露にし、冷たく嘲笑した。 翼は鴉の如く、黒い羽を上空に撒き散らす。 その腕には『邪神の像』が抱えられていた。 「……我々を『取り込み』に来たか、『破壊神』……。 自らの復活を謀る為に……。」 静かに語りかけるゼニス王。 彼の意識はサムエルではなく、その身を利用した『破壊神』に向けられている。 サムエルのまま、『破壊神』は微笑した。 『儚き運命だな、ゼニス王……。 貴殿の肉体は[神]の肉体。 余が一番、欲するモノだ……。』 |
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