雲海は、天に浮かぶ城を支え、
壁は太陽の照り返しを受け、白く輝いている。

天界。
『ゼニスの城』。
<1>
テラスに佇み、ゼニス王は彼方を見据え、沈黙している。
気が付くと、後に智天使ケルビンが立って、こちらを見ている。
心配そうに。

「どうしたのだ?」

自身も神の地位に在るため、理由は読めていたが、
ゼニス王は一応、問うてみることにする。
ポケットからハンカチを取り出し、ケルビンは額の汗を拭った。

「ご存知ですか?
 いえ、既に全て、ご存知だと思いますが……。」

「……サムエル達の事か……。」

重たい王の呟き。
智天使は、表情を緊張させたまま頷く。

「全ては、運命なのだよ……。」

指を彼方に翳(かざ)し、ゼニス王は遠くを見る。
同じく視線の先を追うと、ケルビンは愕然となった。

青い天を覆う、ただ1つの暗闇。
中央は天使の形を取っているが、その雰囲気は禍々しい。
闇の天使が其処に居る。

死の天使サムエルは、変わり果てた姿を露にし、冷たく嘲笑した。
翼は鴉の如く、黒い羽を上空に撒き散らす。
その腕には『邪神の像』が抱えられていた。

「……我々を『取り込み』に来たか、『破壊神』……。
 自らの復活を謀る為に……。」

静かに語りかけるゼニス王。
彼の意識はサムエルではなく、その身を利用した『破壊神』に向けられている。
サムエルのまま、『破壊神』は微笑した。

『儚き運命だな、ゼニス王……。
 貴殿の肉体は[神]の肉体。
 余が一番、欲するモノだ……。』
次へ
この前の[SCENE_17]へ
『DQ3』外伝CONTENTS