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首1本を失い、咆哮を上げて苦痛に喘ぐ『八叉ノ大蛇(偽)』。 残り4本の首を交互に振り回すが、その度に青い血飛沫が飛ぶ……!! 気にせず、勇者アイリは止めを刺すように、 『王者の剣』の刃を潜り込ませた……!! 彼女の血に呼応したのか、刀身から放電が上る。 電撃は、『八叉ノ大蛇(偽)』の神経を刺激し、内臓から焦がし始める。 やがて心臓停止したのか、魔物の巨体が崩れるように倒れ、 そのまま溶けるように空気中に消えていく。 具現化した魔物の姿が、幻のように消えていくのを見届けると、 彼女は視線を他の戦闘中の仲間達に移した。 勇者アクシズが跳び退り、間合いを取り直す。 冷静な彼の視線の先には、 致命傷の火傷で皮膚の爛(ただ)れた『ボストロール(偽)』の姿が在る。 アクシズが二刀の『ガイアの剣』を鞘に収めると、 戦闘の終わりを示すかのように、魔物の巨体が倒れた。 そのまま具現化した『ボストロール(偽)』の巨体が幻のように消滅していく。 「アクシズ……!!」 嬉々として、アイリは恋人・アクシズのところへ駆け出していく。 彼の傍らには自分の父も居るのだが、 お構い無しにアクシズに跳び付いた。 彼女をしっかり抱きとめながらも、狼狽し、 オルテガに視線を移したアクシズ。 『雷神の剣』を腰に下げた鞘に収め、オルテガは苦笑した。 エビルと戦士クリスも、 同じように具現化した魔物が消えるのを見届けていた。 ただ、僧侶リオだけが、消えた魔物達を見送るかのように、 手を祈りの形に合わせる。 彼女に『霊感』が有るのは解かる。 だが、今の魔物達は、全て記憶の具現化であり、生命体では無い筈だ。 魂など無い……。 不審に感じた賢者ディートが、彼女に問いかける。 リオは苦笑して答えた。 「私達だって、当時は彼等に対する恨みの念で、 闘っていたのですわ……。 ……モグルさんの言っていた通り、 弔いなんてしなかったから……。」 今は亡き、魔王バラモスの時だって、 アリアハン国側が魔王軍側の言い分に耳を傾けた事があっただろうか? 全て、人間側の都合で片付けようとしていなかったのだろうか? もちろん、今は理解出来ているのだが、 アリアハン大臣の孫娘であり、 勇者アイリの幼馴染である僧侶リオには、 その事が心に引っかかっていて、仕方が無かった。 |
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