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『氷の洞窟』の入り口には、
巨大な門が在り、異様な雰囲気を放っている。
一同は、扉を見上げて呆然とその場に佇(たたず)む。

番人モグルは片手をパーティの先頭に立つ勇者アクシズの前に差し出し、
茶目っ気たっぷりに、片目を瞑(つむ)った。
しかし意味を図りかねたアクシズが無言で顔をしかめると、
面倒くさそうにモグルは説明を始める。

「門の『通行料』じゃよ!!
 『モンスターメダル』じゃ!!
 レアものも含めて持っておるのじゃろ?」

その時、彼等の遣り取りを見ていた賢者ディートが気を利かせ、
袋から『モンスターメダル』の入った麻袋を取り出した。
気付いた番人モグルは、
アクシズを睨みつけていた目をディートへ向けると満足そうに頷く。

だが、ディートは老人には持ちきれない数量の『モンスターメダル』を全て渡そうとする。
さすがに慌てたモグルは彼を制し、苦笑した。

「いや。
 ワシは『銅』だけでいい。
 ココから先に進むのには、更に通行料が必要になるからのう。」

「何故、この『モンスターメダル』が通行料代わりになるのですか?
 一見、僕達にはタダの金属製の『メダル』にしか見えませんが……。」

当たり前の賢者の言葉と質問に、モグルは嘆息する。

「青いのう……。
 『モンスターメダル』は、魔物達の『命』の結晶じゃ。
 非常に尊い物じゃ。
 そんな事も知らずに、お主達は、彼らの弔いもせず、
 魔物達の命を奪ってきたのかのう。
 寂しいのう……。」

寂しそうに微笑むとモグルは、今度は勇者アイリに視線を移した。

アイリは重い表情のままアクシズの腕を掴み佇んでいる。
だがモグルの視線に気付くと、アイリは徐にアクシズから手を離し俯く。

それを制し、モグルは苦笑する。

「まあ、お主達も好きで魔物達の『命』を奪ってきた訳ではあるまい。
 特に、若い勇者の、お2人さんは魔物達の為に、
 涙を流した痕(あと)が見える。
 グランドラゴーン様にお会いする前に、
 沢山の魔物達が行く手を阻むが、
 あまり乱暴をせぬようにな……。」

ディートから麻袋を受け取り、
『銅』の『モンスターメダル』だけを取り出すと、
自分の袋に移し、満足気に番人モグルは門を開けた。
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『DQ3』外伝CONTENTS