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「……こ、これは何ですの!?」

信じられない光景に愕然となった僧侶リオが、
思わず言葉にする。

祠の中。

かつて、ラーミアの卵が置いてあった祭壇の付近に、
『旅の扉』のような次元の歪みが発生している。
祭壇には、以前のようにオーブが飾られており、
双子の妖精の少女が立っている。
少女達は、勇者アイリの姿に気が付くと、互いに同時に語りかけてきた。

「わたしたちは。」

「わたしたちは。」

「ラーミアの卵を守っていました。」

「守っていました。」

「ですが、ラーミアは『闇の世界』へ旅立ってしまいました。」

「ラーミアの居ない世界で。」

「様々な『神』が力を持ち始めました。」

双子の妖精は、同時に次元の歪みに向かって手を翳(かざ)す。
魔界と人間界との狭間の空間が、次第に巨大化していく。

真剣な表情になり、勇者アイリは妖精達を制する。

「貴女達は危ない。
 下がっていて……!!」

やがて人一人通れる程の大きさに空間が開くと、1人の老人が出てきた。
驚愕し、一行は注目するが、意に介せず老人は語り始める。

「お前達か?
 『勇者の魂』というのは。
 一体、こんな辺鄙(へんぴ)な場所に何しに来たか知れぬが、
 我が長(おさ)が大変会いたがっておられるから、仕方ないのう。」

「俺達の正体を知っているのだから、
 こちらから名乗る必要はなさそうだな……。」

静かに見据え、勇者アクシズが冷静に言う。
老人は笑った。

「ふぉ、ふぉ、ふぉ……!!
 これは失礼したのう。
 ワシは、『モグル』。
 『氷の洞窟』の最初の番人じゃ。」

最後の言葉に反応し、勇者達の表情が固まる。
『氷の洞窟』の最初の番人モグルは、彼らに空間に入るように促した。
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『DQ3』外伝CONTENTS