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出航の日。 『アリアハン』大陸から、『レイアムランド』へ。 航路は真っ直ぐ南西なのだが、 帆船の為、風に流されぬよう、 先ず南下し、西に向かう事となる。 船長が、アリアハン国内で、オールの漕ぎ手を募集すると、 勇者アイリの功績を称え、彼女を尊敬する者達が集った。 戦士クリスが武器防具を揃え、 僧侶リオが大量の薬などを用意する。 商人ミーナが皆の食料を調達し、 勇者オルテガが様々な許可証を用意してくれた。 完全装備となった、巨大船を目にし、 賢者ディートは感嘆の溜め息を漏らす。 「ポルトガの『造船技術』って、本当に凄いですね……。」 「でも、ディート様の『呪文利用技術』には誰も敵いませんわ♪」 リオが言葉を返すが、確かにディートの場合、 もはや『特殊能力』に近いものがある。 数多の『賢者』達の中で、その使用技術は群を抜く。 「自分の個性を信じて、怖がらず素直に表に出すことで、人とは違うモノが出来ます。 それは、最初は凄いエネルギーを伴うし、 心の殻を破るから無防備になって、心が傷つくかもしれない。 最初は誰にも理解してもらえないかもしれないけど、 続けていれば、自分の存在の一部として、見てもらえるようになります。」 詠うようなディートの言葉を耳にし、リオは思い出したように俯いた。 「私の『霊感』と同じですわね。 最初、この事を曝(さら)け出すのは、凄く怖かったですもの……。 だって、人には見えないモノが、私だけに見えるなんて……。」 「でも、意外と、そうでも無かったでしょう?」 「そうですわね。 だって、オルテガ様は、私の『霊感』を理解して、 ちゃんと私を指示して下さいましたもの♪ 皆、私を怖がらずに普通に接して下さいますし、 悩んでいた自分が馬鹿みたいでしたわ♪」 晴れ渡る雲1つ無い空。 両腕を天に向かって振り上げ、リオは大きく伸びをする。 そういえば彼女は、『霊感』が有るから、 お嬢様でありながら『僧侶』の道を選んだだけであって、 外見の僧衣だけで雰囲気は聖職者らしさが無い。 ディートは、とある決意だけを胸に秘め、 今は言わぬ事にしようと心に決める。 「準備、出来たぞ。 乗らぬのか?」 久々のエビル(バラモスエビル)の深い声が、 ディートとリオの耳に届く。 エビルは甲板から彼等を見下ろしている。 巨大な魔物である彼が、甲板の端に行く度に、微妙に船が揺れていた。 思わず驚愕し、2人は狼狽したが、 エビルの肩には相棒のスラリンが乗っており、 更なる揺れが予想される。 ディートとリオが何故、 なかなか船に乗ろうとしないか理解した勇者アクシズは、 苦笑すると、「大丈夫だから乗れ。」と促した。 船は、大勢を乗せ、ゆっくりと航路を西に向け進み始めた。 目的地は、南極に位置する氷の島『レイアムランド』である。 |
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