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「……!!!!」

掛け布団を翻し、飛び起きる……!!

地上界。
アリアハン。
勇者アイリの生家。

自室を見回し、アイリは嘆息した。
俯き、首に掛けた『聖なる守り』が目に入る。

__……やっぱり、タダの『夢』ではなかった……。

不思議な輝きを帯びる『聖なる守り』を握り締め、硬く瞳を閉じる。
夢の光景を覚え、再び深く思い出す。
忘れぬように呟く。

「……破壊神……シドー……。」

だが、ゾーマは最期に、こう言っていた。
その時は、『勇者ロト』である彼女は年老いて生きてはいないと……。

この旅が終われば、アイリは結婚し、
愛しい人の子を授かるであろう。
恋人であるアクシズが、
彼女の父・オルテガに直接掛け合っていたのを思い出す。

__それならば、これからの『幸せ』を大切にして生きよう……。

きっと、勇者として自分の出来ることとは、ここまでなのである。
後は、未来に残された者達を、支援していかねばならない……。

不意にアクシズが扉をノックする音が聞こえ、
アイリは返事をし、扉を開いた。

「もう、出発の時間だから呼びに来た。
 ……どうした?」

彼女は、彼の顔を見つめ、瞳を揺らす。
アイリの肩を抱き寄せると、アクシズはそのままの状態で彼女を見つめた。

「……これから先、何があっても、私を選んでくれる……?
 どんな、過酷な運命が待っていても、私と一緒にいてくれる?」

「ああ……!!」

震える声で問う彼女に、彼は力強く頷いた。
安心させるかのように抱き締める。
鼓動を聴くようにアクシズの胸に頬を当て、
アイリは静かに語り始める。

「……夢を見たの……。」

「夢?」

「……『破壊神』が復活するから、阻止(封印)しなさいと……。」

「じゃあ、俺達でしてやらないとな。」

「……何とも思わないの?」

「何を今更……。」

言われて驚き、アイリは顔を上げ、
アクシズの瞳を真っ直ぐ見つめる。

「忘れたのか?
 俺は、『ガイア』の勇者だ。
 お前が『ロト』なのと同じように。
 ……でも、もちろん、それだけじゃない。」

愛しそうに彼女の頬に手で触れながら、
優しく微笑み、アクシズは柔らかく告げた。

「俺は、自分の意志で、お前を守ると決めたんだ。
 勇者としてではなく、1人の男として。」
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『DQ3』外伝CONTENTS