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まどろみの中。 広がる森林の真ん中に、 勇者アイリは佇(たたず)む……。 天を見上げると、輝く太陽。 いや。 正確には『太陽のような物』である。 光は、徐々に美しい女神の形になる。 __また、『夢』……? もしくは『警告』であろう。 夢であって、これは夢ではない。 そして、女神は語り始めた。 『アイリ……。』 地下世界の創造主であり、勇者アイリを加護する守護神。 精霊神ルビスが、直接アイリの思考に語りかける。 神々しい女神の筈だが、何故か懐かしさがある。 しかし、場の落ち着いた雰囲気とは異なり、 ルビスの言葉は衝撃的なものだった。 『[破壊神]が、再び目覚めようとしています。 今なら間に合います……。 どうか、貴女の手で[封印]を施してください。 その時は、私も手を貸しましょう……。』 美しい言葉で、優しく告げる。 優しさに反して、内容はかなり深刻であったが……。 勇者アイリの表情は、驚愕のあまり固まってしまう。 女神に、勇者は問い質す。 「ゾーマの言っていた、闇から生まれし次なる脅威とは、 その『破壊神』のことなのですか?」 だが、精霊神ルビスは答えない。 だから、今度は質問内容を変えてみる。 「では、その『破壊神』の名を教えて下さい。」 単刀直入に問う。 ルビスの口は無表情のまま動き出す。 『[シドー]。』 説明の代わりに、遥か過去の光景が、 夢の中に生々しい映像となって、鮮明に映し出される……。 何も無い、風だけが吹きすさぶ、土だけの大地に立っている。 生命の息吹さえ感じられない。 気が付くと、目の前に精霊神ルビスが、 『何か』を見据え、静かに佇(たたず)んでいる。 アイリも一緒になって、その『何か』に視線を移し、愕然となった。 禍々しい数本の腕。 大蛇の尻尾。 信じられぬ程の巨体の、『破壊神シドー』がそこにいる……!! 破壊神は、様々な『まやかしの術』で惑わせようとするが、 同じ神であるルビスには通用する筈が無い。 やがて、女神は両手を宙に翳(かざ)し、 巨大な魔方陣を周囲の空に描き出す。 破壊神の肉体は魔方陣に吸い込まれるように奪われ、 精神は、小さな『邪神の像』となる。 そこで、彼女の夢は途切れた……!! |
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