「マズイ事になっちまったかもしれんな……。」

地上界、『レイアムランド』。
『氷の洞窟』に戻り、死の天使アズライルが嘆息する。

アズライル達は、
地下世界の聖域『ロンダルキアの祠』で『邪神の像』を見つけ、
『天空人』としての立場を利用して持ち出す事には成功した。

しかし、『破壊神』に取り込まれ、黒い翼となり、
不気味に冷たく微笑み続ける首謀者サムエルを目にし、
冷酷である筈の彼も、胸の内から沸き上がる違和感が拭えない。
元々、『聖』と『魔』では物質そのものが異なる。

__正直、この『吐き気』をどうにかしたい……!!

アズライルは、氷の壁に手を突くと項垂れた。
<1>
「サムエルは……?」

同じく気分が悪いのか、
顔面蒼白になり死の天使ガブリウルが、
壁際のアズライルに問う。
すると、彼は首を横に振った。

「……あ、そう。
 何処にいっちゃったのかしらね……。」

死の天使ミハエルも、(豊満な)胸を押さえながら、
男性の声で、女性の口調になる。

「私、こんな事言っていいとは思えませんが、
 正直、サムエルが居なくて、ホッとしています……。
 ……怖いというか……。」

威圧感の溢れる首謀者サムエルとの付き合いからか、
心労の為、項垂れるミハエルとガブリウル。
だが、アズライルだけは、『邪神の像』の方に疑惑を抱いていた……。

__何処まで信用できる……?

俺達まで『取り込む』気ではなかろうな?
アズライルは舌打ちする。

破壊神には肉体が無い。
たとえ、天空人(サムエル)の強力な肉体を取り込んだところで、
完全復活するとは、とうてい思えない……。
そして、何故か、破壊神と同化したサムエルは、
仲間である『死の天使』達に、『氷の洞窟』へ一旦戻れと促していた。
理由も告げず。

「サムエルは、『生』に執着しとるんじゃ……。」

双子の番人・兄『オグル』が、銀の『モンスターメダル』を指で弾きながら、
独り言のように語りかけてくる。

「……サムエルはもう手遅れじゃが、
 お前達なら、まだ間に合う……。
 己の罪を認め、己を許し、『堕天使』としての運命を受け入れるのじゃ。
 その方が、『未来』はあるぞ?」

死の天使達は、困惑した表情で互いに顔を見合わせた。
次へ
この前の[SCENE_14]へ
『DQ3』外伝CONTENTS