禍々しい邪神を守るかのように、巻きついた大蛇。
睨みつけるような邪神の瞳は、無機質にして生々しい……。

「これが、『邪神の像』か……!!」

手にした念願の『邪神の像』を両手で抱え上げ、
天界の謀反の首謀者サムエルは、満足気に微笑んだ。
<1>
「一体どうするつもりよ。
 サムエル……!!」

地上界。
『バラモス城』上空。

『死の天使』とはいえ、『聖』に属する者達である。
闇のオーラが放つ違和感に耐え切れず、
死の天使ガブリウルがサムエルを問い質(ただ)す。
その時だった。

『……お前は誰だ?
 私を永年の眠りから覚ますのは、誰だ……?』

聖域から解放され、封印されながらも意識を取り戻した『破壊神』が、
首謀者サムエルに問いかけてくる……!!
思わず驚愕し、死の天使達は『邪神の像』に注目した。
仲間達が、ただならぬ邪気に戦慄するなか、
サムエルだけが冷静に、破壊神の声に答える。

「……私は、死の天使サムエル。
 今『魔界の扉』は守護神の手により開かれている……!!」

『だが、今の私には[肉体]が無い。
 扉が開いたところで、私はどうすることも出来ぬ……。』

遥か過去、精霊ルビスに封印された破壊神は、
肉体を失い、精神だけの姿となって『邪神の像』の中に居た。
首謀者サムエルは冷たく微笑みながら、破壊神に告げる。

「肉体ならば、『私』を使えば良い。
 どうせ、このまま生きていても、堕天使として死する運命なのだ。」

狂った天使の発言に、ガブリウルの表情が凍りつく。
後方の仲間達に視線を移す。
沈黙し冷たく微笑しながら、アズライルとミハエルは、首謀者に注目している。

……と。

闇のオーラが広がり、『邪神の像』を持つ首謀者サムエルの全身を覆った。
吸い込まれるように彼の中に闇が入り、天空人の肉体を取り込んでいく……!!
白い翼は、黒の翼に変色し、顔に禍々しい刻印が現れる。
碧(みどり)の髪は、銀に変色し、華奢な彼の身体は膨張し、逞しい筋肉となる。

「ぐ、ぐおおおおおおおお〜〜〜〜!!!!」

破壊神と同化したサムエルが、咆哮を上げる。
膨張する闇のオーラが、爆発するかのように広がり、周囲を包み始める。
同時に、闇のオーラに触れた森林が枯れ始めた……!!
彼の心に、破壊神が語りかけてくる。

『コレで、お前は[媒介]無しでも魔物達を操れる。
 天界だけでなく、全世界を手中に治めることが可能となる。』

その言葉に、サムエルの表情が不敵な微笑と変わった。
次へ
この前の[SCENE_13]へ
『DQ3』外伝CONTENTS