＜6＞
	地上界。 アリアハン。 船のオーナーである勇者アイリと、 エビルを奪還することに成功したアクシズ達は、 アイリの生家に戻り、それぞれの無事を喜びあっていた。 「アイリ。 　皆が心配していたんだぞ。 　エビル、君もだ。」 厳しい口調だが、勇者オルテガの表情は優しい。 アイリは父に抱きつくと、今度はエビルに視線を移した。 巨大な魔物は、後頭部を掻きながら、申し訳なさそうにしている。 次の目的地は『グランドラゴーン』の居る、 『レイアムランド』に位置する『氷の洞窟』である。 その前に旅支度を整える為、勇者達はアリアハンで一泊する事となる。 宿に泊まろうとしていたアクシズを、オルテガが家に泊まれと促す。 オルテガと居間に2人きりにされ、アクシズは緊張した。 「君は、私に何か言いに来たのではなかったのか？」 「はい。 　正式にアイリと結婚すると。 　ですが、色々遭って延期に。」 大魔王ゾーマ討伐完遂後、普通に結婚する予定が、 迷惑な死の天使達によって延期になってしまった。 こんな筈では無かった……と、感じているのは、 オルテガもアクシズも、同じであった。 偶然、居間の前へ通り掛かり、 扉の前に佇（たたず）みながら、盗み聞きしていたアイリは、 アクシズの言葉に喜んだものの、居間に入ろうとしなかった。 アイリの母・ルシアが、そんな娘を見つけ温かく微笑む。 「コレは、秘策なんだけどね。 　結婚するには多少なりとも『勢い』が必要なのよ……。 　たまには、アイリの方から努力してあげないとね♪」 「母さん……!!」 頬を紅潮させ、狼狽する娘を、母は抱き締めた。 「お帰りなさい。 　アイリ。」 「ただいま。……母さん。」 明日、彼女達は『レイアムランド』へ出発する。 魔界の守護神『グランドラゴーン』と会う為に……。
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