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「結構、深い所まで来ましたよね……。」

松明をかざし、賢者ディートが呟く。
勇者アイリの捜索の為、ネクロゴンドの洞窟に侵入したは良かったのだが、
こう広いと、人1人捜すのも大変なのである。

……と。

不意に、自分を呼ぶ声がし、
勇者アクシズは驚愕して彼方を見据えた。
不思議に思ったディートが声を掛ける。

「どうしました?」

「今……アイリの声がしたような……。」

言うが早いか、
アクシズは声のする方へ駆け出し始める。

「アクシズ、待って下さい!!!!」
叫びながらディートも彼の後を追った。

どれだけ走ったであろう。
肩で息をし、アクシズは天を見上げる。
洞窟内部を見回し、絶叫するように愛しい少女の名を呼んだ。

「アイリ!!!!
 俺だ!!!!
 アクシズだ!!!!」

洞窟内に、彼の声が反響する。
岩陰で、とうとう待ち切れなくなったアイリは、
弾かれるように彼の所へ駆け出していく……!!

「アクシズ!!!!」

「アイリ……!!」

互いの名を呼び、2人は強く抱き合った。
自分の胸に顔を埋め、泣く少女の背中を優しく包むように、
アクシズはアイリを抱く腕に力を込める。
頬と頬が触れ合い、唇と唇を重ね合う。

「逢いたかった……。
 貴方を待ってた……。
 だって、アクシズは私の『勇者』様だもの……。」

涙に濡れた瞳で、彼を眩しそうに見つめ、もう一度、瞳を閉じる。
彼女の唇に、柔らかく温かい感触が返ってくる。
それだけでアイリは幸せだった……。
アクシズの背中に手を回し、全身を預ける。

__私の……『勇者』様……。

抱擁したまま動かない恋人達。
後から追いついた、ディートとライガ(ライオンヘッド)は、
互いに顔を見合わせ、明るく微笑んだ。
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『DQ3』外伝CONTENTS