神竜の去った祭壇を見上げ、 勇者アクシズは皆に聞こえる程の声で呟く。 「俺達は、まだ、『神竜』に勝ってはいない……。」 だが、神竜はアクシズの心情を自分と重ね、彼に自分の望みを託した。 智天使ケルビンは、煤(すす)だらけの服裾を払いながら、 若き勇者を諭す。 「珍しいことですよ。 神竜様は、願いを叶える事はあっても、 助けを請い、願いを託すことはありません。 多分、あれで良かったのだと思います。」 |
||
<1> | ||
次の目的は、複数有る為、優先順位を決める事となる。 無駄な行動が命取りとなるからだ。 天界。 『神竜の塔』から『ゼニスの城』に戻った勇者達は、 オルテガの提案で作戦を練る事になった。 袋から『世界地図』を取り出し、テーブルに広げると、 オルテガは『レイアムランド』の位置を指差し、 真剣な眼差しでアクシズに話しかける。 「神竜の話にあった『グランドラゴーン』の所在は、 『レイアムランド』だと解かった。 だが、レイアムランドは南極に位置する氷の島だ。 『移動手段』だが、普通の船では無理だろう……。」 だが、『アリアハン』は過去『貿易大国』であったものの、 世界大戦後、国交を断ってしまって以来、造船業も廃れてしまった。 今現在、最高の造船技術を持つ国は『ポルトガ』である。 その世界最高の船のオーナーは『勇者アイリ』であり、今はココに居ない。 再び船を注文しようものなら、時間が掛かる。 頼みの不死鳥ラーミアも、今はもう、この世界に居なかった……。 一同は俯き、考え込む仕草を取る。 「それじゃあ、先ず『アイリ』を捜さないといけない……。 彼女が捕らわれた時、呪文を封じられている可能性が有る。 バラモス城から脱出して、徒歩で行ける一番近い町は……。」 私情を必死で押さえ、アクシズは淡々と語る……。 さすがに、その姿が痛々しく映った賢者ディートは、 代わりに彼の言葉を続けた。 「普通に考えると『テドン』ですね。 でも、未だ廃墟ですから、居るとは思いませんけど……。 調べる価値は有ると思います。」 「アイリさん、居るといいね……。」 スラリン(スライム)の無邪気だが、哀しげな声に一同は注目する。 円(つぶ)らな瞳を潤ませ、小さな魔物は、今にも泣き出しそうだ……。 「そうだな……。 皆、アイリを心配してくれて、ありがとう。」 パーティ一番の年長者であり、アイリの父親であるオルテガは、 温かく微笑むと、スラリンの頭部を優しく撫でた。 |
||
■次へ ■この前の[SCENE_12]へ ■『DQ3』外伝CONTENTS |