<3>
一方、バラモス城から脱出していた勇者アイリは、
『王者の剣』を再び装備し、2つの浮島を囲む湖の前に立っていた。
牢番をしていたライオンヘッドも一緒である。
彼女は困惑した表情で、魔物の顔を見つめた。

「私の背中に乗せてやろうか……?」

思考を悟られ、アイリの顔が赤くなる。

「いいの?」

頷く、ライオンヘッド。
魔物の身体は馬より大きく、翼が有る。
アイリは素朴な疑問を投げかける。

「飛べる?」

「鳥ほどではないがな……。」

思った通りの答えに微笑み、
ライオンヘッドの背中に跨(またが)る。

「じゃあ、お邪魔します。
 あ、そうだ♪」

思い付いたように、道具袋から『登山用の命綱』を取り出し、
魔物と自分を結ぶ。
ライオンヘッドは、不思議そうに首を傾げて問う。

「何をしたのだ?」
「こうすれば、貴方から落ちないでしょ?」
「私を飼う気か?」
「まさか……!!」

妙な心配を始めるライオンヘッドに、
アイリは口に手を当て、クスクスと微笑んだ。

「確かに、飼いたい位、貴方は可愛いけど……てのは、冗談ね♪
 私は、貴方にも無事でいて欲しいの。
 え〜〜っと。貴方、名前は何ていうの?」

最初の冗談に狼狽しながらも、気を取り直し、
ライオンヘッドは自分の『呼び名』を告げた。

「この、ライオンにしては大きすぎる『牙』の所為かもしれぬが、
 皆からは『ライガ』と呼ばれている。」

「私は、『アイリ』。
 宜しくね♪
 実は私、まだ『ロト』って名前に馴染んでないの……。」

互いに苦笑し、自己紹介を終えると、
ライガ(ライオンヘッド)はアイリを背に乗せたまま、
助走を付け、高く跳躍した。
次へ
前へ
『DQ3』外伝CONTENTS