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地上界。 『バラモス城』。 魔族特有の禍々しい雰囲気が漂うが、何故か不思議な優美さがある。 城内地下通路。 『魔王の間』を目指す、首謀者サムエルの足音だけが響く。 __私は、一体何をしていたのだ……? 堕天使候補に挙げられ、地上界へ降りて以来、 天界に居る頃には感じた事の無い不思議な感情に、 苛(さいな)まれる結果となった。 気が付けば、グランドラゴーンから勇者ロト(アイリ)を救い、 彼女を『美しい者』として感じるようになっていた。 冷酷な彼が、信じられない行動を起こした。 __いや、グランドラゴーン様は、 最初から『竜の女王の卵』が欲しかったのではなかろうか? 利用されている? いや、それは最初から承知の上だった筈だ。 自分自身もグランドラゴーンを利用する為、配下になったのだ。 だが……。 『魔王の間』に続く階段の手前で足が止まり、翼から羽が舞い落ちる。 しばらく止まった後、徐に階段を下りていく。 かつて、魔王バラモスが座っていた玉座には、 前魔王に酷似した魔物が腰掛け、コチラを見据えていた。 光を宿した冷静な瞳で……!! 「エビル。 正気に戻ったか……。」 首謀者サムエルに呼ばれ、エビル(バラモスエビル)は静かに頷く。 瞳だけは、鋭く交差する。 やがて、エビルの方から口を開く。 「……アイリは、貴様には渡さん……。」 何故か静寂に包まれている城内。 部下である筈の魔物達もおとなしい。 __……!? 異変に気付き、サムエルは大声を上げた。 「エビル、貴様……!!!! 『ロト』を逃がしたな……!!!!」 尚も表情を変えないエビルを、怒りの形相で睨みつけると、 サムエルは踵(きびす)を返しこの場を去る。 テラスへ出ると、翼を羽ばたかせ宙へ浮き上がった。 __呪文は封じてある。まだ、遠くまでは行ってない筈だ……!! |
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