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「……そんなに、この剣が大切なのか……?」

牢に閉じ込められ、力なく俯いたままの勇者アイリに、
番をしているライオンヘッドが問う。
彼女は、ゆっくり顔を上げ、瞳に涙を浮かべたまま深く頷いた。

壁に立掛けられた傍らの『王者の剣』の鞘を口に銜(くわ)え、
ライオンヘッドは、鉄格子向こうのアイリの手元へ届ける。
驚愕すると、彼女は魔物を見つめた。

「確かに、お前は、美しい瞳をしている。
 バラモス様を滅ぼしたのも、何か訳あってのことであろう。」

ライオンヘッドの言葉に、アイリの頬を新しい涙が伝う。
受け取り、『王者の剣』を鞘ごと胸に抱き締め、
彼女は優しく微笑んだ。

「ありがとう……。
 貴方に1つ質問していい?」
「何だ?」

互いの視線が合う。

「今、この城の玉座に居るのは、本当にエビルなの……?」

「うむ。
 『そういうこと』になっている……。」

「『そういうこと』……て、どういう意味?」

不審に感じ、アイリは問いを続ける。
すると、ライオンヘッドは、
何と牢の鍵を開け、彼女に外に出るように促した。

「自分の目で確かめろ。」

目を見開き驚愕すると、アイリは魔物を見下ろし言う。

「で、でも……!!
 それじゃあ、貴方が危ないわ!!」
「ココに居ると、お前が危ないぞ!?」
「……。」

もっともな意見に、黙ってしまう。
意外な言葉は更に続く。

「エビル様が、どうして私を、お前の番人にしたか解かるか?」

「?」

「お前を死の天使サムエルから逃がす為だ……!!」
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『DQ3』外伝CONTENTS