<3>
地上界。
バラモス城。

地下牢の前に佇み、天界の謀反の首謀者サムエルは、
鉄格子の向こうにいる勇者アイリに視線を移した。
アイリは警戒し、首謀者を睨み付けた。

「……私を殺しに来たの……?」

かつて、大魔王ゾーマが『勇者の魂』を狙い、
自分達の命を狙っていたのを思い出し、
喉から絞り出すような声で問う……。
サムエルは微笑し、真っ直ぐアイリを見つめた。

「安心しろ。
 『ロト』を殺せば、私の野望は達成されないからな……。」

「……野望?」

「それにしても、そなたは美しい……。
 人間にしておくのは惜しいくらいだ……。」

瞳の中を見つめられ、
拒絶感から後退りするアイリを追うかのように、
鉄格子に近付こうとしたサムエルを、牢番のライオンヘッドが唸りつける。
そして鉄格子の前に立ちはだかり、サムエルを睨み付けた。

「……エビル様のご命令だ!!
 たとえ、死の天使であろうと、
 勇者アイリには指一本触れさせぬ……!!」

ライオンヘッドの意外な台詞に、アイリの表情が驚きに変わる。
首謀者サムエルは、ライオンヘッドを見下ろし、
不思議そうな表情をした。

__どういうことだ……?

だが、よくよく考えてみれば、
エビル(バラモスエビル)も天界の魔物の1人である。
勇者『ロト』である、アイリが天界から居なくなった事で、
天界の魔物達の暴走が多少沈静化され、正気に戻った可能性がある。

無言のまま、踵を返すと、サムエルは地下牢から去っていく。
エビルの様子を確かめる為に。
ライオンヘッドは、彼が完全に居なくなるのを見計らって、
鉄格子に近付いた。

「……大丈夫か?」

別の恐怖心から二の腕を抱き締め、
震えながらへたり込むアイリの顔を、
心配そうにライオンヘッドが覗き込む。
彼女は視線を魔物に移し、気を取り直すかのように微笑んだ。

「……ありがとう……。
 エビルは、どうして私を牢に入れたの?」

「今ので解からなかったのか?」

「……?」

相変わらず鈍感なアイリは首を傾げ、キョトン……となる。
ライオンヘッドは嘆息し、項垂れた。

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『DQ3』外伝CONTENTS