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地上界。 バラモス城。 地下牢の前に佇み、天界の謀反の首謀者サムエルは、 鉄格子の向こうにいる勇者アイリに視線を移した。 アイリは警戒し、首謀者を睨み付けた。 「……私を殺しに来たの……?」 かつて、大魔王ゾーマが『勇者の魂』を狙い、 自分達の命を狙っていたのを思い出し、 喉から絞り出すような声で問う……。 サムエルは微笑し、真っ直ぐアイリを見つめた。 「安心しろ。 『ロト』を殺せば、私の野望は達成されないからな……。」 「……野望?」 「それにしても、そなたは美しい……。 人間にしておくのは惜しいくらいだ……。」 瞳の中を見つめられ、 拒絶感から後退りするアイリを追うかのように、 鉄格子に近付こうとしたサムエルを、牢番のライオンヘッドが唸りつける。 そして鉄格子の前に立ちはだかり、サムエルを睨み付けた。 「……エビル様のご命令だ!! たとえ、死の天使であろうと、 勇者アイリには指一本触れさせぬ……!!」 ライオンヘッドの意外な台詞に、アイリの表情が驚きに変わる。 首謀者サムエルは、ライオンヘッドを見下ろし、 不思議そうな表情をした。 __どういうことだ……? だが、よくよく考えてみれば、 エビル(バラモスエビル)も天界の魔物の1人である。 勇者『ロト』である、アイリが天界から居なくなった事で、 天界の魔物達の暴走が多少沈静化され、正気に戻った可能性がある。 無言のまま、踵を返すと、サムエルは地下牢から去っていく。 エビルの様子を確かめる為に。 ライオンヘッドは、彼が完全に居なくなるのを見計らって、 鉄格子に近付いた。 「……大丈夫か?」 別の恐怖心から二の腕を抱き締め、 震えながらへたり込むアイリの顔を、 心配そうにライオンヘッドが覗き込む。 彼女は視線を魔物に移し、気を取り直すかのように微笑んだ。 「……ありがとう……。 エビルは、どうして私を牢に入れたの?」 「今ので解からなかったのか?」 「……?」 相変わらず鈍感なアイリは首を傾げ、キョトン……となる。 ライオンヘッドは嘆息し、項垂れた。 |
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