<6>
「連れてきたぞ。
 今直ぐ、神竜のところへ案内しろ……!!」

天界。
『ゼニスの城』。

勇者オルテガをパーティに加えた勇者アクシズ達は、
智天使ケルビンの前に佇む。

オルテガは、初めて見る天界の神々しさに狼狽している。
白塗りの外壁、光り輝く壁面。城下に広がる果てしない雲海。
翼を持ち、羽を撒き散らす天空人達。
それは、聖堂に飾られた絵画のように鮮明で美しかった。

「私は、夢でも見ているのか……?」

呆然とするオルテガに、苦笑して賢者ディートが囁く。

「オルテガ様。
 ココは現実の世界です。
 僕も、最初は信じられませんでしたけどね……。」

「神話が神話で無くなるとは、このことだな……。」

智天使ケルビンは、勇者アクシズを見据え、真面目な表情で頷く。

「皮肉な話で申し訳ないのですが、
 『勇者アイリ』さんが天界から居なくなった事で、
 天界の魔物達の大暴走が沈静化されています……。
 行くのなら、今であろうと……。」

だが、首謀者サムエルが残した次元の歪みは残っている。
ダンジョン化した天界が、完全に元に戻っている訳ではない……。
どっちにしろ危険には変わりなかった。
智天使ケルビンは、勇者達3人と1匹を『神竜の塔』に通じる階段まで促す。

「皆さん。
 『神竜の塔』へ上る準備は出来ましたか?」

振り返るケルビンに問われ、
勇者アクシズは皮手袋を整え、2刀の『ガイアの剣』を収める鞘のベルトを、
左右交互にしっかり掛けなおす。

勇者オルテガは、『雷神の剣』を収める鞘を腰に掛け、ベルトを締める。
そして、盾を構え直した。

賢者ディートは、『賢者の石』を袋から取り出し、自分の道具袋に収め、
回復役の準備を整える。

スラリン(スライム)は、『魔獣の爪』を装備し、ゴーグルをはめ直した。

一同、お互い顔を見合わせ頷くと、彼等は掌(てのひら)を重ねた。

__何だかワクワクしてきましたね。
   不謹慎で、申し訳ないですが……。

彼等の結束を目にし、ケルビンは丸眼鏡を人差し指で上げ、微笑した。
この次の[SCENE_12]へ
前へ
『DQ3』外伝CONTENTS