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地上界。
『氷の洞窟』中央部。

「何処(どこ)かに行かれるのかな?」

首謀者サムエルを呼び止め、番人オグルが微笑する。
彼はモグルの双子の兄で、
『銀』のモンスターメダル収集を生業(なりわい)としている。
(ちなみに、弟のモグルの方は、『銅』のモンスターメダル収集が趣味。)

振り返り、首謀者サムエルは冷たく微笑する。

「我々の欲する『ロト』は手に入った……。」

「では、後は『邪神の像』だけだというのだな?」

オグルの問いに、首謀者は静かに頷き返す。

「じゃが、忠告しておこう。
 無茶はせんほうが良い……。
 今のお主は、『負』の力に囚われた天空人なのじゃ……。
 見つけたとしても、逆に『邪心の像』に支配される可能性がある。
 『破壊神』は、そなたのような者を利用するじゃろうて。」

「承知の上だ……。」

「何故、自分の身を滅ぼすような真似ばかりする?
 堕天使となっても、未来が無くなる訳ではないだろうに……。」

オグルの言葉は、グランドラゴーンの時と同じであった。
さすがに動揺したのであろう。
翼を翻し、サムエルは怒りの形相で、番人オグルを睨みつける。

「質問は、そこまでにして頂こう。
 今後、このような問いをすれば、そなたの命も頂く事になる。」

オグルは静かな瞳で、サムエルを見つめた。

「問いはせんが、ワシはお主が心配なだけじゃ。
 それだけは忘れんようにな。」

言って踵(きびす)を返すと、オグルは持ち場に去っていく。

彼にとって、調子の狂う言葉。

唇を噛み締めサムエルは氷の壁を殴りつけた。
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『DQ3』外伝CONTENTS