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地上界。
バラモス城。

__あんな所に……!!

鉄格子の向こうに、立掛けてある愛用の『王者の剣』を見つめ、
勇者アイリは困惑した。
今の彼女は、『静寂の玉』によって呪文を封じられ、
地下牢に監禁されている。
気が付けば牢の番をしているライオンヘッドが、アイリを見つめている。
嘆息すると、彼女は魔物に優しく語りかける。

「『王者の剣』は私の大切なモノなの……。
 アクシズが私の為に、
 自分の命を削ってまで作ってくれた剣なの……。
 お願い……。
 私は逃げないわ……。」

「だが、お前は、我が君主を滅ぼした……。」

唸りながら抗議するライオンヘッド。
瞳に涙を浮かべ、アイリは俯く。
魔物は一瞬怯んだものの、直ぐに首を振って体勢を立て直す。

「確かに、剣は大切なモノかもしれないが、
 私も、『新君主』に、剣を渡すなと命じられているのだ。」

「『新君主』……?」

確か、魔王バラモスは、
勇者アイリ達の手によって滅んだ筈ではなかったのか?
彼女は顔を上げ、魔物に問う。
嘆息すると、ライオンヘッドは唸るような深い声で、
衝撃の名を口にする。

「エビル様だ。」

__……!!!!?

愕然となるアイリ。
思わず鉄格子を掴み、狼狽して叫ぶ。

「嘘よ……!!
 そんな筈ないわ!!!!
 何かの間違いよ!!!!」

声が反響するが、望む答えは戻ってこない。
彼女は力無く項垂れ、床に両膝を突いた……。

__アクシズ……。
   教えて……。
   私、どうすればいいの……?

涙が溢れる。

両手で顔を覆い、牢の中で泣き崩れる勇者アイリを、
困惑した表情でライオンヘッドは見つめていた。
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『DQ3』外伝CONTENTS