『[ロト]の魂を、渡す気は無い様だな……。』 地上界。 『氷の洞窟』内に、グランドラゴーンの深い声が響く。 |
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勇者『ロト』であるアイリを捕らえたまでは良かったが、 天界に対して謀反を起こした首謀者サムエルは、自らの目的を果たすまでは、 彼女をグランドラゴーンには渡さぬと言い出した。 決して表情を変えぬサムエルに、グランドラゴーンは嘆息する。 『まあ良い……。 では、約束を変更しようではないか。 お前達は、[神竜]と[竜の女王]の子である[卵]を連れてきている。 それで良い……。』 首謀者の後で控えていた死の天使達は、思わず驚愕した。 グランドラゴーンは更に続ける。 『あいにくコチラには子がいない。 [竜神の子]だが、教育を施せば、良い魔王となってくれるであろう。』 「……して、名はなんとします?」 そうと決まれば、命名の儀式である。 死の天使ミハエルは、水鏡を前にグランドラゴーンに尋ねる。 名前1つで、その者の運命が決まってしまう。 それ程まで命名の儀式は重要なものであった。 グランドラゴーンは、呪われた名を口にする。 竜神としての血を封じ込め、魔界の王とする為に……。 『汝(なんじ)の名は、[竜王]……!!』 彼が命名した瞬間、凄まじい爆音と共に、天から怒りの如く稲妻が振ってくる。 『卵』の父である『神竜』が、激しく抵抗しているのであろうか……!? だが、神竜の抵抗空しく『竜の女王の卵』は魔界に転送され、 何も無い石畳の床だけが残る。 「……『竜王』ですか。 確かに、『魔王』に相応しい呪われた名ですね……。」 冷たく微笑し、ミハエルが静かに言う。 『世継ぎが出来た……。 お前達には礼を言わねばならぬな……。』 グランドラゴーンが、死の天使達に称讃の言葉を述べる。 そう……。 勇者達は、間に合わなかったのだ……。 |
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