勇者アイリにとって、久し振りの航海。 そして、目的地は目前に迫っている。 |
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「アイリさん、今日は機嫌いいね♪」 「え?」 艶やかな柔らかい黒髪を風になびかせ、 甲板に佇(たたず)む勇者アイリを見つけ、 スラリン(スライム)が声を掛ける。 驚愕し慌てる彼女と、思わず咳払いする勇者アクシズ。 しかし、賢者ディートには察しがついたらしく、 聞かない振りをして孤島だけに視線を移していた。 船がルザミの海岸に着き、船員達が碇(いかり)を下ろす。 勇者達全員が小船に乗ったのを確認すると、 力自慢の船員がオールで漕ぎ始める。 地上界。 ルザミの孤島。 そして、かの国での別名は『流刑島』。 島の原住民と、流刑になった罪人達が暮らしている。 流刑の対象になったのは、無実の罪の者も少なくない……。 地動説を唱えた天文学者ガルレオも、その1人だった。 地動説とは、『地』球が『動』いている『説』の略で、 これまでの学者達が唱えていた、地球が止まっていて、 他の星が地球を中心に回っているという論を覆すものだった。 他の学者達に疎まれ、迫害を受けた天文学者ガルレオは、 無実の罪を着せられ流刑となる。 勇者アイリは過去の記憶を辿り、学者の住む小屋に向かう。 ……と。 __……!? 微量の殺気を感じた勇者アクシズが足を止めて、振り返る。 パーティの中で一番鋭い彼は、射る様な目で周辺を見回す。 誰も居ない。 「どうしたのですか……?」 不審に感じ、賢者ディートがアクシズに問う。 「いや……。 誰かに付けられている様に感じたのだが……。 気の所為だったようだ……。」 アクシズは苦笑する。 だが、目は笑っていない。 ディートは嘆息すると、真剣な表情で彼を見た。 「気を付けた方がいいみたいですね……。」 「ああ。」 「何故だか解かりませんが、 死の天使達はアイリさんが『ロト』だと知っています。 ひょっとして彼等の狙いは……。」 2人は互いに顔を見合わせ頷く。 この世界で何かが起こっているのは、確かである。 アクシズは彼方(かなた)を見据えた。 |
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