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「ケルビンさん。
 この勝負、私達の勝ちです。」

凛とした勇者アイリの言葉。
勝ち誇った智天使ケルビンの表情が、途端に崩れる。
一同は驚愕し、アイリに注目した。
意に介せず彼女は、語り続ける。

「私は、かつて『星を見る者』に、出会った事があります。
 場所は『ルザミ』の孤島。
 其処には、地動説を唱えて流刑になったガルレオさんが、
 望遠鏡で星を眺めていました。」

唖然とし、言葉を失ったままの智天使ケルビン。
その反応を『正解』と受け取った勇者アクシズは、荷物を持ち上げた。

「じゃあ、次の目的地は『ルザミ』だ。
 船で行くから、少し時間がかかるが、何とかなるだろう。」
「ラーミアが居てくれたら、早く行けるのだけど……。
 でももう、次の世界に旅立ってしまったから……。」
「じゃあ、行きましょうか!!」

勇者達3人と一匹は、賢者ディートの瞬間転移呪文『ルーラ』で、
『ルザミ』の近場まで飛ぶ。

__こ、こんな筈では……。

頭を抱え、勇者達の消えた床を見つめる智天使ケルビン。

……と。

突然、鞭が彼の上半身に纏わり付き、ケルビンは後方へ倒れる……!!
衝撃で丸眼鏡のレンズにヒビが入り、
彼は眼鏡を手に取ると、愕然となった。

「あら〜〜〜、間に合わなかったか♪」

女性の声に、ケルビンが恐る恐る顔を上げると、
死の天使ガブリウルが冷たく嘲笑している。

__……!!?

何時(いつ)からいたのだろう……。
戦慄し後退り、逃げようとしたケルビンの首根っこを、
死の天使アズライルが捕まえる。
そして、そのまま床にケルビンを叩きつけた……!!

「言え!!!!
 『ロト』は、何処に行った……!!?」

「そんな奴に聞く事ないですよ。
 『勇者の魂』は何故か『ルザミ』に向かっているみたいですからね……。」

死の天使ミハエルが、額に指を当てながら微笑する。
すると、死の天使3人はアズライルの瞬間転移呪文『ルーラ』で消えてしまった。

__こ、これは、大変マズイことになりましたよ……!!

智天使ケルビンは上体を起こすと、
ヒビの入ったままの丸眼鏡を掛けなおし、震撼した。
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『DQ3』外伝CONTENTS