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__これくらいで足りるかな……?

メルキドの道具屋で不足分を購入し、
袋を抱えたまま、アイリは石畳の路地を駆ける。

「アイリじゃない……!!」

不意に呼び止められ振り向く。
懐かしい姿を見とめ、
アイリは嬉しそうに彼女の名を呼んだ。

「エルマさん!!」

「久し振りじゃない〜〜〜♪」

笑顔で駆け寄り、盗賊エルマが勇者アイリを抱き締める。
エルマは周囲を見回し、彼女が1人で居る事に対し首を傾げた。

「アクシズは、一緒じゃないの?」
「ううん、そうじゃないわ。
 宿で、待たせているの。
 あ、そうだ。カンダタさんは?」
「それがね……。」

会話が弾み、アイリはエルマの言葉に驚愕した。

「エルマさん、カンダタさんと結婚したの……!!?」

「アイリは、アクシズと結婚してないの?」

「……うん。」

「あいつ……。一体、何やってるのかしら……。」

寂しげに俯くアイリの頭を、
まるで自分の妹のようにヨシヨシと撫でると、エルマは嘆息した。

失恋したものの、女というのは吹っ切れるのが非常に早い。

確かに、アクシズが好きだった気持ちは届かなかったが、
カンダタが自分を好きだという気持ちは受け入れたのだ。
彼女自身、アイリを認めていた為に、失恋を素直に受け入れることが出来た。

エルマの場合、普段から危ない仕事をしている為、
気持ちの整理をつけるのが得意だ。
……でなければ、盗賊稼業が務まる筈が無い。
普通の人ならば、自己嫌悪と自責で潰れてしまう。

__そうだ……!!

突然、思い出したように、アイリは強引にエルマの手を引き、
神殿中庭の花壇まで連れて行く。

「何?」
理解出来ず、狼狽する盗賊エルマに、勇者アイリは苦笑した。

「ココで『レミラーマ』を使って欲しいの。」

「え?」

「訳は後で話すから、唱えて♪」

言われるままに、エルマは地に手を翳し『レミラーマ』を詠唱した。
掌から光源が発せられ、地に這う様に波紋を広げていく!!
波紋を崩すように光が上り、黒い外套の姿を浮き上がらせる……!!

__あった……!!

嬉々として、アイリは花壇の中に足を踏み入れ、黒い外套を持ち上げた。
不思議なことに、外套の被さった部分が見え隠れし、時折透明にも見える。

その道具の正式名称は『闇の衣』。
皮肉にも、大魔王ゾーマがアレフガルドに放った闇の衣の片鱗が、
人間の武具になってしまったのだ……。

ちなみに……。
その後カンダタは、地下世界の未開の地でデルコンダルを建国するが、
それはまだ数年後の話である。

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『DQ3』外伝CONTENTS