「『肉眼では中々見えない道具』って……?」

智天使ケルビンの問題。
第2問目のヒントの意味が気になり、勇者アイリは訳を問うた。
だが、彼はニヤニヤ微笑を浮かべたまま、何も答えない。

ココは天界。
勇者達は『神竜の塔』へ行かせてもらえず、
未だ『ゼニスの城』で立ち往生していた。
<1>
賢者ディートが、瞬間転移呪文『ルーラ』を詠唱し、
一行を『城塞都市メルキド』まで導く。
ケルビンの問題では『暗き世』と、なっていたが、それは既に過去の話。
大魔王ゾーマが滅んだ今、地下世界アレフガルドは逆の『光の世』となっている。

__花の中にそれは眠る……。

2問目最後の言葉を思い出し、勇者アイリは額に指を当てて、
それらしき場所の記憶を辿った。
確か、メルキド中央部には神殿が在り、中庭は花壇となっていたはず……。

「何も無いな……。」

勇者アクシズは嘆息し、周囲を見回す。
アイリに言われた通りの場所で、『答え』となる道具を探すが見つからない。
花壇の中に手を差し入れ、よく探す。
その姿は、傍(はた)から見れば不審者に映ったのかもしれない……。

「そこで、何をしておる……!!?」

野太い声で呼び止められ、勇者達は顔を上げた。
だが、背の低いスラリン(スライム)だけは、花の間に埋まっている状態だ。
高僧の姿が目に入り、アイリは懐かしそうに顔を綻(ほころ)ばせた。

「神官様。」
「おお。
 そなたは、勇者アイリ殿。
 いや、今は勇者『ロト』殿と言うべきか……。
 しかし何故、メルキドへ?」

神官の問いに、勇者達3人は困った表情で互いに顔を見合わせる。
その反応に苦笑し、神官は彼等を神殿内に迎え入れた。

「何か、訳ありのようじゃな。
 まあ良い。
 アレフガルドにも平和が戻り、我々にも余裕が出来た。
 今度は、コチラが勇者殿の力になる番かもしれぬ……。」

神官は、勇者アイリと勇者アクシズを交互に見る。
そして不思議そうに、首を傾げた。

「そなた達……。
 タダの『仲間』という関係には見えないのだが……?」

「え……〜っと、彼は私の……。」

恥らって俯(うつむ)くアイリを制し、神官は温かく微笑んだ。

「みなまで言わずとも解かった。
 そうか。
 子孫に関しては、心配なさそうじゃの。」

ニヤニヤしながら、ディートがアクシズを突っつく。
「アクシズ、責任重大ですよ♪」
「……変な、プレッシャーをかけるな……!!」

__それに、俺はアイリに、まだ『それ以上』触れていないんだ……。

幼馴染の言葉に嘆息しつつ、アクシズは天を見上げた。
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