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天空人が住まう聖地、天界。
決して変化することのない青空の下、広がるのは、果てしない雲海。
その上に聳(そび)え立つ、光輝く神の居城『ゼニスの城』。
裾には蔦が絡みつき、根の部分は雲に隠れている。

途中、何度か邪魔に遭ったものの、
『ゼニスの城』に辿り着いた勇者達は、
謁見の間に通され『ゼニス』王に挨拶をする。
翼を持つ王は人智を超えた落ち着きで、勇者達を出迎えた。

「よくぞ来た。
 ゆっくりしていきなさい。」

未だ神々しい環境に馴染めず、狼狽したままの勇者アイリと賢者ディート。
だが、勇者アクシズと、スラリン(スライム)だけは別である。
赤い敷布の上に跪(ひざまず)き、アクシズは頭を垂れた。

「お久し振りです。
 ゼニス様は、天界の異変についてどうお考えですか……?」

「うむ。
 知っておる。」

「そういうことではなくて……!!!!」

何故か、この件について、まともに取り合おうとしないゼニス王。
思わず拍子抜け、呆れて突っ込みを入れてしまう羽目に……。
アクシズは嘆息し項垂れた。

彼等の様子に気付いた智天使ケルビンが、
流石に見かねて、王の代わりに答えることになった。
勇者達3人と一匹は、城の一室に招かれる。
そしてケルビンは、3人に来客用のワインを出してきた。

「まあ、ゆっくりしていって下さい。
 下界の酒は美味しいので、こっそり持ち帰っているのですよ♪」
「でも、私、未成年なので……。」

苦笑したアイリが、丁重にお断りする。
そういえば、彼女は今年やっと19歳になったばかりだ。

「そうですか……。
 我々は、まったく年を取らないもので……。」

一言多いケルビンの台詞に「カチン」ときたアイリは、
いきり立って立ち上がるが、アクシズに止められる。

「俺達は、神竜に会いに来たんだ。」

本題を切り出し、彼は智天使ケルビンの方を見る。
すると、ケルビンは意外そうな表情で、理由を問うた。

「何故ですか?
 大魔王ゾーマは倒したのでしょう。
 もう、やることなんて残っていないじゃないですか……。
 それとも、『叶えて欲しい願い』とかがあるのですか?」

この言葉に、勇者達3人は互いに顔を見合わせる。
そして、代表で賢者ディートが今までの出来事を話すこととなった。
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『DQ3』外伝CONTENTS