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地上界。 レイアムランド。 『氷の洞窟』最深部。 『約束が違うのではないか……。 上質の魂を差し出し、我に忠誠を誓うと言ったのではなかったのか……?』 グランドラゴーンに窘められ、サムエルは冷静に言葉を返す。 「『ロト』の魂は、まだまだ成長します。」 『どうやって、成長させるのだ……? ゾーマの時のように、『ロト』を苦しめるのか?』 「……どっちにしろ、『ロト』を苦しめる結果にはなるでしょう……。」 そして両者、沈黙する。 長い静寂の後、ヒドラ族の長グランドラゴーンの方から口を開いた。 喉を鳴らすように、深い声でサムエルに語りかける。 『お前は少し[自虐的]になっている。 他の死の天使達もそうだ……。 その、未完成な感情……。 [天空人]というよりは、まるで[人間]のようだ……。』 ……だから、堕天使候補となったのではないか?……とでも言いたげに、 グランドラゴーンは口を閉ざす。 サムエルは驚愕した。 しかし、気の遠くなる年月を生きてきた彼は、 人間の感情がどんなものだか解からない。 俯き、固く拳を握り締める……。 __そうか……。……我々は『神の失敗作』だったというのか……。 『サムエル?』 「失礼します……。」 グランドラゴーンに問われ、 サムエルは動揺を悟られぬよう、踵を返し去っていく。 首謀者サムエルは洞窟内で独り立ち止まり、考える。 __私が『神の失敗作』ならば、『完全』になれば良い……。 そうなる為には、自分の存在を神に認めさせばならぬ……。 ……悔しいのか? いや、嬉しいのかもしれない。 今まで『目標』すらなく破壊行動を続けていた彼に、『目標』が出来た。 俯く彼の唇から笑いが漏れ始め、止まらなくなった。 笑いが止まり、軽く咳き込む。 だが……。 彼の行き過ぎた『目標』は、次第に、 行き過ぎた『野望』へと変化を遂げていく……。 |
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