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天界へ通ずるダンジョン。
天界コロシアム会場。

白い外壁と、白い客席は、尽きることの無い太陽光の照り返しを受け、
眩しいほどまでに輝いている。

「アイリさん。こっちだよ♪」
勇者アイリを気に入ったスラリンが、コロシアム会場に彼女を案内する。
賢者ディートは、勇者アクシズに視線を移す。
互いに目が合い彼等は嘆息した。

死の天使サムエルの力と『ロト』の試練効果で、
ダンジョン化現象が二重に発生した為、
天界の魔物達が大暴走を起こしたのは、スラリンから伺っている。

「その(騒動の原因の)『ロト』が、アイリだと知ったら、
 スラリンの奴、流石に吃驚(びっくり)するよな……。」
「黙っておきましょうね……。」
「……ああ。」

小声で、囁くように話し合うと、アクシズとディートはアイリに視線を移した。
見た目は、誰にでも愛されるような美しい少女である。
傍目からは、とても大魔王ゾーマ討伐完遂の英雄には見えないであろう。

その時である。

勇者達が、更なる上の階へ行こうと、コロシアム会場に足を踏み入れた瞬間、
予期せぬ竜巻が発生し、彼等の行く手を阻んだ……!!

アクシズはアイリを庇って横に避け、
ディートは竜巻に向かって、真空呪文『バギクロス』を詠唱する……!!
彼の呪文効果によって生み出された竜巻は、
今有る『竜巻』とは『逆向きの方向』で回り出す。
回転の違う竜巻同士が衝突すると、
互いに打ち消しあい、空に消えてしまう。

「相変わらず、呪文の使い方が天才的だよな。」

久々に目にする幼馴染の敵わぬ才能を目にし、アクシズは称讃する。
賢者ディートの特殊能力は、呪文の『使い方』に有る。
位置調整から、発動効果調整まで、実に自由自在・臨機応変に呪文を操る。

「今の『竜巻』は、人為的なものでしたね……。」

天は相変わらず晴れており、積乱雲等の親雲が見当たらない。
ディートが見据える、『竜巻』の消えた跡には、『人影』が残る。
人影は、徐々に砂風を払いながら、
勇者達の前に、その姿を露(あらわ)にした。

コロシアム会場の中央に佇む、天使の姿。
死の天使ミハエルである。

白い翼を広げ、神々しい程の逆光を浴びているが、何かがおかしい。
気配というか、雰囲気というか、上半身は女なのに、下半身は男である……。

彼は、自分の金色の髪を指でかき上げながら、
細い目を更に細めて、微笑んだ。
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『DQ3』外伝CONTENTS