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天界。
……いや。
未だ、ココは『天界に通ずるダンジョン』内部。

浮島から洞窟内に入り、上り始めた勇者達と対照的に、
スライムの『スラリン』は、天界コロシアム会場から洞窟を下っている。

__ああ、せめて口が開いたら、こんな奴ら一発なのに……!!

地上界では、馬鹿にされがちなスライム族だが、
スラリンはエビルの相棒であり、天界コロシアム所属の歴戦の戦士だ。
彼は、他のスライムと区別する為、『ゴーグル』をつけている。

丸っこい身体で、勢いよく飛び跳ね、体当たりしては魔物達を蹴散らしていく!!
だが、彼の得意な『息』系の技は、
エビルの持つ『モンスターメダル』が口を塞ぎ、
使用不可能となっていたのだ。

天界の魔物達は、
死の天使サムエルが起こした『時空の歪み』に対するダンジョン化に加え、
勇者アイリが来た事による、『ロト』の称号の効果での、
更なるダンジョン変化が原因で、大暴走しているのか、
仲間のスラリンの、見分けすら付かないらしい……!!

__もう、ボクだって、皆を傷つけるの、嫌なんだよ!!!!

瞳に涙を溜めながらも、自分の身を守る為、
魔物達の足元を崩しながら薙ぎ倒していく!!
小さい身体だからこそ、出来る技である……!!!!

そんな彼でも、限界がある。

ちょこまか動きまわる、スラリンの動作に、
痺れを切らしたドラゴンゾンビが巨大な足で、
一気に彼を踏み潰しにかかってきた!!!!
狭いダンジョンの通路が邪魔し、スラリンは避けきれず壁に激突する……!!
しかし、口だけは絶対に開かない!!

__たとえボクの身体が潰れたって、このメダルだけは守るからね……!!

相棒エビルの姿が脳裏を過ぎる。
だが無情にもドラゴンゾンビの足は、尚も彼を狙い、覆い被さる様に襲ってくる。
スラリンは観念し、目を閉じた。

しかし……。

いくら待っても、魔物の巨大な足は下りてこない。

「……?」

スラリンは不審に思い、目を開け、ゴーグル越しに頭上を見上げる。
ドラゴンゾンビは氷付き、彼が触れると砕け散ってしまった!!
魔物の死骸の先に、複数の人影が見える。

スラリンは表情を綻ばせ、彼等の名を呼んだ!!
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『DQ3』外伝CONTENTS