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「皆、付いて来て……。」 そう言って自ら先頭を歩き出す勇者アイリに、 勇者アクシズは慌てた。 賢者ディートも、彼女の言葉に従う。 岩に囲まれた洞窟は、かつて『夢見るルビー』が置いてあった、 ノアニール地方西の洞窟に酷似していたのである。 __もし、私の記憶が正しければ、『回復の泉』があるのよね……。 勇者アイリは、記憶力が特に良い。 まるでメモしたかのように『覚えた事柄』を思い出す。 細い道を進み、右手に曲がると、確かに『回復の泉』が見えてきた。 泉に到着し、アイリは2人に愛らしい笑顔を見せる。 「ほら、無事着いたでしょ♪」 澄んだ泉の水を、手ですくいながら彼女は、とても嬉しそうに言う。 取り敢えず、貴重な『休憩場所』が出来た。 皮手袋を脱ぎつつ、アクシズも泉の水を手ですくう。 一気に飲み干すと、喉の渇きが癒された。 ディートも彼に続く。 そして、道具袋から水筒を取り出し、泉の水を汲んだ。 「『癒しの効果』までは持続してくれないでしょうが、 大事な『水』ですからね。」 旅の中で、最も重要なのは『飲める水』である。 一般的には、その辺の『水』で構わないと考えがちであろうが、 未開の地では、毒で『汚染』されている危険性もある。 迂闊(うかつ)に手を出すと、 魔物に殺される前に、水で死ぬ可能性もあるのだ。 「しばらく、ココで休もう。 アイリ。 もう随分、寝ていないだろ?」 一体、何処が出口なのか、さっぱり見えてこない。 アクシズは、自分の道具袋から毛布を取り出すと、 アイリに被せ、そのまま座らせた。 ……と、彼女は突然、思い出したように苦笑する。 怪訝そうな顔をする彼に、アイリは語りかける……。 「……そうじゃないの。 何か、私達が『初めて出会った時』もこうだったな〜〜、 ……っと思って……。」 __俺達が『初めてあった時』って……、確か……。 場所は、ロマリア地方の泉。(彼の呪文で、枯らしてしまったが。) その時の彼女は、産まれたままの姿で……と、 そこまで思い出し、アクシズは咳払いした。 恐る恐る、アイリに視線を移すと、既に彼女は安らかな寝息を立てている。 幸い、こんなところまでは、彼女に見られていなかったようだ……。 |
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