__しかし、あの天使さん。何しに来たのでしょうね……。

流石に不審に感じたのか、ディートは真面目な顔で首を傾げる。
死の天使ガブリウルが去った後、鳥系モンスターの大群との戦闘。
……どうしても、『無意味な事』には思えないのだが?
<1>
『竜の女王の城』城内。
最奥の光射す床に、『天界への入り口』は存在した。
勇者アクシズは、勇者アイリを、その光の方へ促す。
考え事をしていた賢者ディートも、慌てて彼等の所へ駆け寄る。

「アイリ。
 其処(そこ)に立ってみろ。」

アクシズに言われ、アイリは頷いた。
彼女の授かりし『ロト』の称号が、天界へと導いてくれる筈である。

「俺はエビルのおかげで、天界へ上ることが出来た……。
 今、エビルは天界にいる。」

語りながらアクシズは、友の姿を思い浮かべる。
だが、彼は知らない。
友は今、死の天使サムエルの手中にあることを……。

勇者達3人は、同時に『光』の中に入る。
彼等の肉体は光の粒子の中へ消え、何も無い床が残る。

「おたっしゃで〜〜〜♪」

彼等の旅立ちを見守っていた、お喋りホビットが、大袈裟に手を振る。
だが既に、彼の声は届いていない……。

転送までの時間がかかったものの、
勇者達は、天界へと通じる場所へ到着した。

浮島に足を踏み入れ、アクシズはその光景に驚愕する。
一方、アイリは以前『何処かで見た光景』に愕然となる。

「こんなだったか!?」
「精霊の夢の景色!?」

両者同時に口に出した為、傍目からは何を言ってるのだか解からない。
賢者ディートは狼狽し、2人の間に入って大袈裟に手を振る。

「同時に語ったら、何を言ってるのか解かりませんよ!!
 1人ずつ、お願いします……!!
 はい。アイリさんから。」

いきなり振られ、アイリは狼狽したが、気を取り直し話始める。

「え〜〜とね。
 夢の中に出てきた光景に良く似ているの……。
 雰囲気というか、この空気というか……。」

「解かりました。
 次、アクシズ!!」

ディートは強引に仕切る。
気分を害しているであろう幼馴染の姿に、アクシズは嘆息した。

「以前来た時には、こんな『ダンジョン』無かったんだよ……。
 一方通行だったというか……。」

『ダンジョン化』してしまった『天界へ通ずる道』を目にし、
勇者達は顔を見合わせる。
だが、ココで引き返す訳にもいかないのだった。
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